Last updated 2018-03-23

国会の最終日、なぜ議員会館は官僚たちで埋め尽くされるのか?

腹の底でバカにしながら全与党議員に”お礼参り”



池田
「ついに通常国会が閉会しました。政界用語で『常会』と呼ばれる通常国会は、1月から始まって150日間ほど開催されます。
今週は、毎年この時期に永田町で繰り広げられる、ある風物詩的な光景を紹介しましょう。
その裏に、ある重大な真実が隠されているからです」

 風物詩的な光景?

池田
「閉会した当日の衆議院と参議院の議員会館内は、縦横無尽に歩き回る大量の霞ヶ関の役人たちで埋め尽くされています。
彼らは国会議員たちに“お礼”をするため、与党議員全員に対して挨拶回りをしているのです」

 何に対するお礼なの?

池田
「各省が作成した法案を通常国会で成立させてくれたことに対するお礼です。

例えばこんな感じです。

『あ!●●先生! !□□省でございます。 ○○法では大変お世話になりました。誠にありがとうございました』と。

この一見なんでもないように見える光景に、大変重大な意味が隠されているのです。
役人たちは徹底して低姿勢ですが、実は腹の奥底で国会議員たちをバカにして、高笑いをしているのです」

 どーいうこと!?

池田
「これを理解するには、まず永田町と霞ヶ関に与えられた権限と役割を再確認する必要がある。
この国のルール、つまり法律を作る『立法』という強力な権限を持っているのは国会です。

ビジネスでもスポーツでもどんな世界でも、ルールを作る側が一番強いに決まっている。

だから、この国で最も強い権力を持っているのは国会なのです。
その構成員である国会議員は私たちが選挙で選べるから、民主主義が成り立つわけです」

 一方、霞ヶ関の役割は?

池田
「国会が立法したルールに基づき、内閣と国会が決めた政策を『執行』するのが霞ヶ関の役割です。
でも、現実を見てください。

ほとんどすべての法案は、霞ヶ関の役人たちが作成しています。

その法案を内閣に上げ、閣議決定されたものが国会で審議にかけられ、採決される。
本来、この国で最も強い権力を持っているはずの国会議員たちは、何もせずに採決を行なうだけのマシーンに成り下がっているのです」

 とはいえ、最終的な決定権は国会にあるんだよね?

池田
「理屈ではそうですが、現実はそうなっていない。
例えば、今回の国会で成立した法律は70本以上もあります。

さきほど通常国会の会期は150日間だと書きましたが、土日を除けば約100日にすぎない。

70本以上の法案を100日でちゃんと審議できますか?

結局、与党議員たちにとって上司にあたる内閣が決定した法案には、与党議員全員が賛成するだけ。
逆に、野党議員は何も考えず、自動的に反対するだけなんです」

 つまり、霞ヶ関の各省庁が作った法案が内閣に渡った時点で、実質的に成立が決まってしまっているということか。

池田
「そのとおり。
行政機関の霞ヶ関が事実上、立法権までも手にしている。

自分たちでルールを作れて、その執行もできるのでは、まさにやりたい放題。

しかもここが一番重要で深刻なのですが、役人を選挙で選ぶことができない。
つまりこの国は、民主的なプロセスを経ていない連中によって支配された独裁国家なのです」

 ここでようやく、通常国会の閉会日に繰り広げられる風物詩に潜む“闇”が見えてくる。

池田
「役人たちは、とにかく低姿勢で国会議員に挨拶回りをする。

与党の幹部議員に対しては局長級が出向く。

霞ヶ関官庁の局長ともなれば、その社会的な“格”は大企業の社長以上。
自尊心の高い国会議員たちはいい気持ちになり、満足しちゃう。
法案も考えず、ラクをして偉くなった気分になれるのだから。

ちなみに影響力を持たない若手議員に対しては、課長や室長級が出向きます。
彼らは表向き、目上である国会議員に低姿勢を貫きますが、内心では上から目線で値踏みしながらコントロールしている。
そして日本国民を完全に支配しているのです」



週刊プレイボーイ 2016年 No.25号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.38」より

LinkIconIndex に戻る