選対本部の実務責任者は選挙のスーパーマンだ!!
池田
「選挙期間のド真ん中となる今週は、選挙活動の裏側を公開しましょう。
よく選挙に関する報道で、“支持を訴える”とか“組織固め”と言いますよね?
支持を訴えるとは、街頭演説やテレビ出演で不特定多数の人に支持を訴えることを指し、いわゆる『浮動票』を獲得するための活動です。しかし“組織固め”に関しては、具体的に何をやっているのか、いまいちピンときませんよね?」
確かによくわからない!
池田
「自民党を支援する組織は、集票マシーンとして有名な建設業協会やJAから、全国各地の商工会や街の酒屋さんの集まり、看護師の組合など、非常に幅広い。
連立与党を組む公明党の支持母体である創価学会も、今や超重要な支援組織です。
さらに地方議員や自民党員、各選挙区の地元企業なども加わりますから、表面的な人数は膨大です。
しかし、すべてが票に結びつくわけではないのです」
組織を“固める作業”が必要ってこと?
池田
「そのとおり。例えば自分が働く組織の上層部や社長から『選挙ではこの人に投票せよ』と言われても、投票するとは限りませんよね?私の経験上、何も努力をしないと、『組織票』とはいえ、せいぜいその半分程度しか実際の票に結びつかない」
そんなものかー。
池田
「つまり組織固めとは、支援組織内に支持を浸透させることです。
その作業を担うのが各候補者の選挙対策本部(選対本部)であり、事務局長や選挙長という役職名で呼ばれる実務責任者が重要な役割を果たします。
有能な実務責任者はまず、各支援組織を説得し、選挙に慣れた人材を派遣してくれるよう依頼します。
次に、派遣された人たちと共に所属組織や企業を訪れ、その組織内で人望のある人物を見つけ出す。
そしてその人に支援の輪を広げてくれるようにお願いをするのです。
例えば候補者に親近感や信頼感を持ってもらうためにミニ集会を開催してもらうなど。さらに組織外の家族や友人や知人も紹介してくれともお願いする。
そんな作業を連日連夜繰り返すのです」
めっちゃ大変そうだ……。
池田
「もちろん、創価学会への働きかけも絶対に欠かせません。
創価学会員にとって、公明党候補への支援に関しては無条件で絶対です。
しかし、自民党候補に対しては同じ姿勢じゃない。
従って自民党候補はしっかりと学会員たちに顔見せをしつつ、彼らの納得を得たうえで支持を広めていくという丁寧な作業が不可欠なのです。これも選対本部の実務責任者が担う大きな仕事です。
同時に、浮動票も獲得するために有権者ウケする演説の内容を考えたり、効果的な街頭演説の場所を選び、応援弁士の手配もやります」
完全に実務責任者が当落の鍵を握ってるじゃん!
池田
「さらに、選挙事務所に集まる支援者やボランティアさんなどが円滑な人間関係になるように気配りもしながら、さまざまな指示に従ってもらわなくてはならない。
選挙時は地元の政治家や秘書も選対本部の指揮下に入ることが多いので、彼らを部下として使いこなす人間力も必要となる。
この仕事が務まる人物は、どんな職業に就いても優秀ですよ」
でもそんな人材を希望の党の新人候補者は確保できるの?
池田
「民進党の一部と合流したことで、労働組合が希望の党の支援組織になりました。
ですから労働組合組織から、選挙経験豊富な人が派遣される場合もあるでしょう。しかし、心配なことがあるんです」
なになに?
池田
「労働組合員のほとんど大企業の会社員なので、非常にプライドが高いんです。もし希望の党の候補者本人や関係者が、『後から合流した連中の仲間め』とか『左翼系め』みたいな態度を少しでも出してしまうと、労働組合の組織票は実際の得票に結びつかないでしょうね」
選挙って深いな~。
週刊プレイボーイ 2017年 No.44号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.102」より