隣国からの“援護射撃”に救われ続けるラッキー総理
池田
「安倍首相は、今月28日に召集予定の臨時国会冒頭で衆議院を解散し、総選挙に打って出ることを決断したようですね。
私はこの連載でかなり前から、『安倍首相は臨時国会の冒頭で解散・総選挙に打って出ざるを得ない状況だ』と繰り返し断言してきました。その理由を知りたい方はバックナンバーをチェックしていただくとして、今回皆さんにお話ししたいのは、安倍首相の“豪運”とも言える圧倒的な運の良さです」
そんなに運がいい人だっていう印象もないけどなあ。
池田
「順を追って説明しましょう。
安倍さんは一度、自民党の総裁と首相を務めながら体調不良を訴えて辞めています。ところが2012年9月、民主党政権下で野党として行なわれた自民党総裁選で、勝利が確実視されていた石破茂氏を破り、逆転勝利します。
そして二度目の総裁になってからわずか2ヶ月後、信じられないような幸運が舞い込みます。
与党民主党の野田佳彦首相(当時)が、野党だった自民党の安倍総裁との党首討論で、安倍さんの挑発に簡単に乗っかり、圧倒的に民主党が不利な情勢だったのに衆議院を解散してしまったのです。
その結果はご存知のとおり、自民公明両党で衆院の3分の2以上の議席を獲得する圧勝で政権与党に返り咲いたのです」
確かに安倍さんにとって超ラッキーな解散劇だったわ!
池田
「こんなのはまだ豪運伝説の序章に過ぎません。
2014年10月には、内閣改造直後に不祥事で閣僚が相次いで辞任します。経済産業大臣だった小渕優子氏が政治とカネに関する疑惑で、法務大臣だった松島みどり氏は公職選挙法に関する疑惑でダブル辞任に発展するという、前代未聞の大スキャンダルに至ったのです」
そんなことあったなー!
池田
「弱り果てたはずの安倍首相は、何を思ったか逆風が吹き荒れていたのに衆院を解散する大博打に出ます。
その結果は、わずか3議席を失うだけの最小ダメージでおさめる大勝利。
さらに翌2015年には、政治とカネの問題で西川公也農林水産大臣(当時)が辞任し、新国立競技場の整備計画でも問題が相次いだ。2016年には、またも政治とカネの疑惑で甘利明経済再生・TPP担当大臣が辞任。そして女性問題で議員辞職した宮崎謙介元衆院議員の騒動もあり、自民党のイメージダウンは凋落しました」
確かにコンスタントにスキャンダルが発生しているのに政権は安定しているよなあ。
池田
「今年に入ってからは、森友学園と加計学園の問題です。
わずか5年を振り返っただけで、“大スキャンダル祭り”といってもいいような酷いありさま。普通の内閣なら何回吹っ飛んでも足りないような状況ですよ。
アベノミクスだって、5年も経っているのに一部の金融関係業者を潤す程度の効果しか出せておらず、多くの国民は恩恵を感じられていない状況です。ハッキリ言ってひたすらに大失敗続きの政権なんですよ」
確かに!
池田
「ところが安倍政権がピンチに陥るたびに中国が東シナ海や南シナ海で騒動を起こしたり、安倍さんへの援護射撃かと思えるほど絶妙なタイミングで北朝鮮がミサイル発射実験や核実験を繰り返しているのです。そうなると国民は国の安全保障が心配になって安定した政権を望むようになり、スキャンダルへの怒りは後回しになるのです」
本当にラッキーだな!!
池田
「最近も山尾志桜里衆院議員がダブル不倫騒動を起こし、解散総選挙を打つには絶好のシチュエーションを敵側が作ってくれた。
それは同時に、来年の自民党総裁選で安倍さんにとって代わろうと野心を燃やしていた石破茂氏や岸田文雄氏の動きをも封じることにもつながるのです。
もしかすると安倍首相は、日本の歴史に刻まれるほど神がかったレベルの“豪運”を持った人なのかもしれませんよ」
週刊プレイボーイ 2017年 No.41号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.99」より