補選で1敗でもすれば自民党総裁選が黄信号
池田
「今週は、来月22日に予定されている衆議院のトリプル補欠選挙(愛媛3区、青森4区、新潟5区)について解説しましょう。本来、補選というのは与党にとって楽勝の選挙です。なぜなら総選挙のように300もある選挙区で同時に戦うわけではないので、補選の候補者には閣僚や党幹部、人気のある政治家を続々と応援に投入できるからです。さらに各種団体や企業などからの応援態勢作りや選挙資金の調達まで、選挙支援を手厚くできる。しかも補選の多くは現職の政治家が死去した場合に行なわれるので、選挙戦略上、故人の子や妻などの縁者による“弔い選挙”の雰囲気を生み出せるのも非常に有利。もはや負ける方が難しいほど楽な戦いなのです」
じゃあ与党の圧勝だね。
池田
「通常なら3勝0敗の勝利がマストです。しかし今回は各選挙区に怪しい雰囲気が漂っている。愛媛3区の場合、死去した自民党議員の白石徹氏の次男が弔い合戦として挑戦します。しかし亡くなった白石徹氏はまだ当選2回で、地盤固めが終わっている状態とはいえない。しかも対抗馬は、過去に同選挙区で当選した過去を持つ元衆院議員で、ある程度の地盤を持っており厄介です。さらに加計学園問題で注目を集めた今治市が選挙区に隣接しているので、この問題に触れずに選挙を戦うのは難しく、頭の痛い状況です」
青森4区と新潟5区は?
池田
「青森4区は、死去した木村太郎衆院議員の弟で、青森県庁の職員が出馬します。弔い選挙にはなりますが、木村太郎氏は衆院に7回も当選したのに世間的にも永田町でもまったく目立ったことがなかった人物。しかも後継者が夫人や秘書経験のある子供ではなく、まったく無名の弟というのはかなり弱い。新潟5区も長島忠美氏の死去にともなうものですが、長島氏の家族や秘書が継がないために弔い選挙にはならない。与党は現時点で候補者の一本化もできていないという状況です」
泉田裕彦前新潟県知事が有力みたいですが?
池田
「泉田氏なら知名度的にも実績的にも十分ですが、普通、県知事を3期も務めた立派な人物が50歳を過ぎてから1年生議員になろうとはしません。だから泉田氏は迷っているのかも知れません。どうなるにせよ、選挙まで1ヶ月強しかない時点で候補者が決まっていないのは非常にマズイ。もし“保守系第三極”的なスタンスをとる対抗馬が出現し、そこに野党が相乗りするような態勢を形成されたら、自民党が議席を落とす可能性は十分にあります」
なるほどー。
池田
「だから与党の幹部たちは、安倍首相を庇うために『2勝1敗でも問題ない』という趣旨のコメントを発しているのです。しかし私は、1敗でもすれば安倍首相の自民党総裁3選目が危うくなるとみています。自民党への支持が弱まったことを示す補選の結果を受けて保守系第三極を作る動きが一気に加速すれば、与党内の危機感に火がつき、安倍首相の求心力が急速に低下するからです」
補選の結果が自民党の総裁選にも影響するのかー。
池田
「衆院は来年末に任期満了を迎えるので、1年半以内には必ず総選挙がある。もし、小池百合子東京都知事が率いる新党のような保守系の第三極勢力が本格始動して態勢も整えば、膨大な票が流れることは明白。しかし現時点では第三極の態勢は整っておらず、そのほかの野党もボロボロな状態。今すぐに解散・総選挙をすれば、与党の勝利は間違いないのです」
安倍首相は補選の前に衆院を解散しそうなの?
池田
「もし解散しない場合、今回のトリプル補選を無敗で乗り切れることを神に祈り、来年の自民党総裁選や衆院の任期満了まで保守系の第3勢力が生まれないことを天に願いながら毎日を過ごすことになる。もし私が安倍首相の立場なら、絶対に今秋の解散・総選挙を決断しますね」
週刊プレイボーイ 2017年 No.39・40号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.98」より