忘年会だけでも数百件!無休で這いずり回る日々
池田
「新年を迎え、もうすぐ通常国会が始まりますが、国会議員はどのような年末年始を送っていたのでしょうか? 実は秋の臨時国会が閉会してから通常国会が開会するまでの期間は、国会議員にとって最も過酷で辛い日々なのです。地元での行事が目白押しで、選挙区に張り付いてしんどい活動をこなさなければならないからです」
そんなに大変なの?
池田
「今年のように、年明け早々にも解散総選挙があるかもと噂される年はなおさらです。強固な後援会組織に支えられ、政党の支援がなくても選挙に圧勝できる議員は全体の5%もいません。今や与野党ともに公募で集まった議員ばかりで、政党の人気次第で当落が決まる。自前の強固な支援組織を持たない彼らにとって、選挙区で自らの顔を“広く浅く”でも売ることの重要性は、昔よりも逆に高まっているのです」
具体的にはどんな活動を?
池田
「11月後半から12月後半までは忘年会シーズン。地元企業や各種団体、町内会などの忘年会は、自分の名前を売る絶好のチャンスです。友人、知人同士の小規模なものも加えると、どこの選挙区でも数百件ほどの忘年会が行われています」
そ、そんなに多いの!?
池田
「しかし、忘年会のほとんどは政治家を招待していません。だから秘書や支援者、友人知人から集めた忘年会情報をもとに、呼ばれてもいない忘年会に勝手に顔を出すわけです。参加者から冷たく罵られたり断られたりすることもしょっちゅう。しかし、そんなことで心が折れていては選挙などできません。『日頃お世話になっている○○さんが忘年会をやっていると伺ったので、ちょっとご挨拶を』などと言い訳をしながら、ちゃっかりと全員に名刺やパンフレットを配るわけです」
心が鍛えられるなあ……。
池田
「夜間はそんな忘年会巡りを繰り返しつつ、日中も大忙しです。企業や団体、町内会の年末行事から各町内の公民館や消防団の車庫の大掃除にいたるまで、普段の生活では気づかないような実に様々な年末イベントに参加して名前と顔を売る。そしてようやく忘年会シーズンが終わったと思えば、今度は支援者たちのお宅へと『年末のお礼回り』に行くのです」
まだ終わらないの!?
池田
「1日50軒回ったとしても、年内に支援者全部は回りきれないので、そのまま元旦から『新年の挨拶回り』へと移行します。地元の有力者になると、親類縁者や仕事関係者など、正月から多くの人が集まるものなのです。実際に地域の実力者も多いので、もし気に入られれば支援してくれるようになる場合もあり、挨拶回りにも気合が入ります。さらに、お正月最大の人出が見込めるビッグチャンスといえば初詣。地元の神社やお寺さんの参道付近に出張り、参拝客に満面の笑みで手を降ってお辞儀をし続けてアピールする」
むっちゃハードだなー。
池田
「そんな活動を続けているうちに、今度は新年イベントと新年会シーズンが始まってしまう。こうして年末年始の2ヶ月余りを休み無しで這いずり回るのです。そして今週末、彼らは東京・永田町に戻れる。普通の人なら恥ずかしくてプライドが傷ついて絶対にできないような活動の連続だった日々がようやく終わるのです。国会議員にとって、通常国会の招集はまさに“天の助け”といえる、待ちに待った日なのです」
わかる気もするなー。
池田
「しかも地元から永田町の議員会館に着いた途端、霞が関の高級官僚や大企業の役員、各種全国団体の幹部などが『先生、今年もよろしくお願いいたします!』などと向こうから挨拶にやってくる。地元にいるときとの天と地のようなギャップに、気分を良くするなというほうが無理な話ですよね。主に若手議員たちが通常国会で妙にハイテンションなのは、このような背景があるからなのです」
週刊プレイボーイ 2017年 No.5号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.66」より