Last updated 2018-03-23

この秋、安倍政権は解散・総選挙に出るしかない状況に追い込まれた!!

総務省OBが知事になると地方交付金で有利になる!?



池田
「8月27日に行なわれた茨城県知事選挙の結果、私は10月の解散総選挙が確定的になったとみています。その理由は、茨城県知事選で与党系の候補者が勝ち、10月に行なわれる青森4区、新潟5区、愛媛3区の衆院トリプル補選に向けて弾みがついたからではありません」

 じゃあなんで?

池田
「まず、茨城県知事選挙の特殊性と実態を知る必要があります。今回敗北した橋本昌前茨城県知事は、現役では最多選となる6期24年も知事を務め、なんと7期目を目指していました。こんな自治体は日本中を探しても茨城だけ。以前から橋本氏の多選問題は猛烈な批判を浴びていましたが、橋本氏は選挙に強かった。与党は橋本氏を引退させることも対立候補の一本化もできないまま、5期目、6期目と不戦敗を重ねていたのです。今回の選挙も、与党は“勝ったら儲けモン”くらいの気持ちで候補者を選んだはずです」

 そんな選び方なの!?

池田
「もし本当に与党が本当に勝ちたいと思っていたのなら、担ぎ出す候補者は総務省(旧自治省)出身の官僚OBだと政界では相場が決まっています。常に苦しい地方自治体の財政において、地方交付税に影響を持つ総務省とのつながりが重要だからです。総務省のOBを担ぎ出し、与党内や地方政界、財界の思惑をとりまとめ、有権者には中央とのパイプがあるから地元の経済が発展するなどと訴える選挙戦略が最もリスクの少ない必勝法なのです」

 そうだったのかー。

池田
「まさにそのパターンで知事になった人こそが、旧自治省(現総務省)出身の橋本氏だったのです。しかし今回勝利した大井川和彦氏は経済産業省OB。しかも入省して約15年で退官した、“ザ・官僚OB”と呼ぶには程遠い人。おそらく安倍政権で幅を利かせている経産省官僚で首相秘書官の今井氏あたりが主体となり、適当に候補者を選定したのでしょう」

 でも勝ちましたよね?

池田
「知事選直前の世論調査で、橋本氏の多選問題への批判が予想以上に大きく、大井川氏が健闘していることが判明したのです。そこで安倍政権は、さも最初から全力で取り組んでいましたという感じを装い、大物政治家を次々に投入して勝利をもぎ取ったかのような顔をしているのです。しかし与党幹部の内心は穏やかではないでしょう」

 勝ったのに?

池田
「投票結果の内容に問題があったからです。勝ったとはいえ、得票率でわずか7%弱の差。票数で7万票差という大接戦でした。これは大量の与党批判票が橋本氏に流れたことを示しています。その傾向は、共産党の得票率を見ると明確になる。通常、選挙で共産党が躍進する場合は決まって、“与党に批判が集中しているけど保守系の野党も頼りない”という政治不信が高まったときです。しかし今回、共産党の得票率は前回の衆院選などと変わらず10%前後だった。つまり今は批判票が共産党にではなく、保守系の野党に流れる傾向にあるということ。橋下徹氏が代表だった時代の維新の会や、今なら小池新党のような第三極の態勢が整えば、大量の浮動票が第3極に流れる傾向にある状態ということです」

 なるほどー!

池田
「もし10月のトリプル補選で自民党が敗北すれば、安倍首相は次の自民党総裁選で勝つことが難しくなります。そうなれば衆議院が任期満了になる来年末には“安倍首相ではない誰か”の下で行なうギャンブル選挙になり、それは安倍首相のみならず自民党執行部としても避けたいシナリオです。ならば内閣改造で支持率の下落が一時的に止まり、茨城県知事選で一応は勝利し、与党を脅かす第三極も形成されていない今のうちに、存在感の薄い民進党を仮想敵にして総選挙をやるのが有利なのは明白。この秋、安倍首相は自ら解散・総選挙に打って出るしかない状況になったと私はみています」



週刊プレイボーイ 2017年 No.38号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.97」より

LinkIconIndex に戻る