Last updated 2018-03-23

地方の有力者が自分の子供を議員秘書に送り込む理由とは?

昔は偉かった政策秘書が罵倒される運転手に……



池田
「自分の秘書を『このハゲ〜!』と罵倒して一躍有名になった豊田真由子衆議院議員ですが、今度は青森県で現職の町議会議員を務める人物を後任の秘書にしたことで再び注目を集めています。地方議員と国会議員の秘書の兼務を問題にする報道もありますが、そこはまったく問題ではありません」

 そういうものなの?

池田
「もともと地方議員の多くは本業というべき仕事を持っている人が多く、議会の拘束時間も平均して年間120日ほどと短い。採用する側の国会議員が認めれば秘書は兼業が可能です。有権者が豊田氏と秘書を兼務する町議をどう判断するのかは別の問題ですが」

 だいたい国会議員の秘書って、どんな種類の人がなるの?

池田
「秘書になる目的は、『政治家を目指す』『秘書経験を生かして家業を継ぐか起業する』『職業として秘書になる』の3パターンです。これは今も昔も変わらない。しかしどんなタイプの人が秘書になるのかは、時代とともに大きく変わりました」

 どんなふうに?

池田
「秘書になるタイプも3パターンあります。まずは政治家の親を継ぐために秘書を経験するケース。全体の1割弱くらいを占め、この比率はここ20年ほどかわりません。続いては地方議員や経営者など、地方の有力者の子弟がなるケース。昔は全体の7割程度でしたが、最近は1割程度でしょうか」

 経営者の場合はなんで子供を秘書にさせたいの?

池田
「経営に必要な知識と経験が身につく上に、強力な人脈を築けるからです。その事業に関係する役所や政府系の金融機関などに融通が利くようになれば圧倒的に有利ですから。私が秘書になった経緯もこのパターンでした。私の場合は個人的にも政治に強い関心があったので喜んで働き始めましたが。しかし政治家が役所への影響力を減らすのに比例して、このパターンの秘書も減りました」

 池田さんの親も経営者?

池田
「はい。父と故松岡利勝農林水産大臣は高校時代の同窓生で、父から松岡事務所に放り込まれました。父にとっては、自分も息子も政治家から身内のような認識をもってもらえる可能性が高く、なんらかの場面で優遇される可能性も高まるだろうという目論見です。最初の半年間、試用期間として給料ゼロという超ブラックな雇用でしたが、文句も言わず働きましたね。実際、親の会社の社員として給料を親側が持ち、出向の形で秘書をやる人も多かった。一方の政治家は給料を払わなくてもいい上に、選挙のときはその親が熱心に支援してくれるのだから最高の関係なんですよ」

 親は選挙まで応援するの?

池田
「そこが面白いところで、最初は下心で子弟を秘書に送り込んでも、やはり人の親なので、たいていは子供が仕える政治家を損得抜きで熱心に応援し始めちゃうんですよ。選挙はもちろん、パーティー券の購入などの金銭面でも支援します」

 秘書の給料のみならず政治資金の援助まで!

池田
「そして最後のパターンが、普通に就職先として秘書になる人たちです。昔は公設と私設を合わせると10人以上の秘書を抱えるのが普通で、私が仕えた松岡さんは20人以上も雇っていました。でも今は5、6人が相場で、3人は国から給料が出る公設秘書。残りの2、3人は、同じく税金から出る政党助成金で払える範囲内の人数です。地方選出の議員だと5、6人の秘書で東京と地元の選挙対応もやるのだから相当な激務です」

 豊田議員の秘書も……。

池田
「『ハゲー!』と罵倒された人は秘書の筆頭である政策秘書でした。昔なら10人以上の秘書を束ね、大企業の社長からもペコペコされる立場だったのに、今や運転手までさせられた上にハゲ呼ばわり……。政治家の秘書は悲惨な話が尽きないので、またの機会に面白いエピソードを紹介しましょう」




週刊プレイボーイ 2017年 No.37号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.96」より

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