Last updated 2018-03-23

特別編 「なんでどんなタイプの政治家も大臣になると劣化しちゃうのか?」

ついに安倍改造内閣が発足した。
でも、どれだけの人が本気で期待しているんだろう?
振り返れば、誰が総理でもどの党の政権でも、だいたい期待ハズレに終わることばかりだった。
「この人なら違うかも!」と思えたような人でも、当選回数を重ね、大臣になる頃にはだいたい精気も覇気も感じられない政治家に仕上がってしまう。なぜなのか?
 そんな疑問を、本誌で『政界斬鉄剣!!!』を好評連載中で、政官界の舞台裏を知り尽くす政治評論家、池田和隆氏がわかりやすく解説してくれた!!

閣僚人事で実質的権力を握る事務方の官房副長官


池田
「内閣改造が行なわれましたね。多少の期待感があっても確実に裏切られるでしょう。どんなに有望視された政治家でも、大臣や党の幹部を歴任していくうちに目がよどみ、キレのない印象に仕上がっていく。その原因は閣僚の選び方にあります。よく『閣僚人事は総理の専権事項』だと言われますが、実際には官僚がすべてやっています。ここ50年以上、本当に自分で人事をやった首相は小泉純一郎さんくらいです」

 そうなの!?

池田
「閣僚の“身体検査”という言葉がよく使われますが、首相個人には調査能力がありません。調査をするのは官僚です。各省庁から、役所にとって都合がいい議員がリストアップされるのです。その人事を取りまとめているのが事務方(官僚上がり)の官房副長官です。現在は杉田和博氏が務めている。官房副長官には、省庁のトップである事務次官経験者が基本的に就任します。彼らは政治家ではないので内閣改造が行なわれても留任するケースが多く、絶大な影響力を持つ影の実力者なのです」

 そうだったのか!

池田
「どんな政治家が官僚に好まれ、大臣候補にリストアップされるのか。そこを理解するため、政治家をタイプ別に分類して解説しましょう。最近の政治家は、世襲議員、官僚出身、公募組、有名人系と、4つに分類されます。彼らはタイプが違うのに、大臣になる頃にはみんな量産型の残念な政治家になってしまう」

 それが不思議なんだよな。まずは世襲議員から!

池田
「自分の夫人や女性閣僚の失態に振り回され、勝手に窮地に陥った安倍晋三首相。『未曾有』の漢字も読めなかった麻生太郎元首相。東京都議選で圧倒的な無能ぶりを晒した石原伸晃氏。“官僚に嫌われる政治家”を自認していたのに厚労大臣に就任した途端、受動喫煙防止法などの厚労利権に没入した塩崎恭久氏。“超おバカ議員”として永田町で超有名な世耕弘成氏など、ダメな世襲議員は数え切れません」

 ボンボンばかりだね。

池田
「彼らのアドバンテージは、親から『地盤・看板・カバン』を引き継いだこと。子供が親から財産をもらうこと自体は何も悪くありません。問題は、彼らが自らの力で政治家になったのではないことを痛感していることなんです。そこに落とし穴がある」

 どういうこと?

池田
「謙虚な姿勢で議員生活を始めるため、先輩議員や官僚からの教えを素直に聞いてしまうのです。だから先輩や官僚が敷いたレールからはみ出そうとしない。その結果、何も変えられない凡庸な政治家に仕上がるのです。彼らの目標はただひとつ。親を超えることだけなのです。親が大臣経験者なら、より格上の省の大臣になるのが彼らのゴール。国の繁栄や国民生活など考えちゃいません」

官僚の思惑どおりに行動した議員が大臣になれる

 官僚出身の議員は?

池田
「官僚出身者の目標は、同じ年次(同期)や先輩の官僚を超えることのみ。彼らは超高難易度の国家公務員試験を突破した秀才揃いですが、そのなかでもさらにランクがある。公務員試験の成績によって入れる省庁が限定され、入省後も試験の成績によって出世の限界が最初からほぼ決まっているのです」

 そうなの!?

池田
「官僚で政治家になろうとするのは、事務次官になれそうもない人ばかりです。選挙さえ突破し続けて大臣になれれば、同期や先輩を追い抜いて一発逆転できるというのが、唯一にして最大のモチベーションです。先の国会で迷走答弁を繰り返した金田勝年前法務相や、加計学園問題で獣医師会に情報を漏洩させた山本幸三前地方創生相、『このハゲー!!』で名を馳せた豊田真由子氏などがいますね」

上昇志向や自己実現にしか興味がない連中か……。

池田
「続いて公募組。政党の公募に応募して政治家になった人たちですね。基本的に1名しか当選できない小選挙区制では、『誰を』ではなく『どの党を』支持するかが勝敗を分ける。だから与野党問わず、政治経験はないけど高い学歴や職歴など、見栄えのする経歴を持った大衆受けしそうな人ばかりになった。彼らは共通して “意識高い系”なので、非常に勉強熱心です」

 ダメなことなの?

池田
「世襲議員と同様、先輩議員や官僚の言うことを熱心に学んでしまう。官僚はたいてい自分たちよりも学歴が上なので、言われることに疑問も感じずに受け入れてしまう。これは有名人系も同じです。彼らは政治の素人だとバカにされているのを自覚しているので、意外と勉強熱心です」

てことは……。

池田
「ほかのタイプの議員と同様、“量産型政治家”への道を迷わず進みます。そして当選回数が重なってくると、政治家きどりで大臣ポストを欲しがったりする。文部科学大臣をやった元プロレスラーの馳浩氏や、同じ文科省の副大臣を務めたヤンキー先生こと義家弘介氏などですね。本当に何もしない人が多いのが有名人系の特徴です」

 つまりどんなタイプの政治家も、官僚が描いた絵図のとおりに行動しちゃってるってことかあ……。

池田
「官僚の望みどおりに行動し続けた政治家が、後に“閣僚候補”としてリストアップされる。だから誰が新しい閣僚になったところで、何も変わるはずがないのです」



週刊プレイボーイ 2017年 No.34・35合併号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』特別編(vol.65)」より

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