負け戦の応援に総裁が行くのは超異例!!　なぜ！？

池田
「今週はやはり、東京都議会議員選挙について解説しましょう。結果はみなさんもご存知のとおり、都議会自民党が歴史的な惨敗を喫し、小池百合子東京都知事率いる都民ファーストの会が圧勝しましたね」

　自民党大敗の原因は？

池田
「引責辞任した自民党東京都連会長の下村博文氏も、その前の会長だった石原伸晃氏も、永田町の関係者なら誰もが知っているほど“無能で残念な政治家”として有名でした。加計学園問題の“文科省メモ騒動”で注目を集めた萩生田光一官房副長官も、都議会議員出身で都連の幹部。彼は都議時代から現在に至るまで、知る人ぞ知る“東京都庁の利権に最も熱心な政治家”のひとりです。こんな連中の下で選挙を戦ったのですから、勝てるわけがありません」

　無能とワルだらけかあ。

池田
「そんなことより、気になったことがふたつあるんです。自民党が選挙戦最終日の街頭演説に安倍晋三総裁を投入したことと、大勝利の翌日に小池知事が都民ファーストの会の代表を辞めてしまったことです」

　党の総裁が応援演説するっておかしいことなの？

池田
「敗色が濃厚な選挙戦に総裁を投入するなど、前代未聞の異常事態です。自民党では、国政選挙でも知事選でも候補者が当落ギリギリ以下の場合、負けた場合のダメージを考慮して総裁を応援に行かせることなど断じてありません。今回は地方選なので直接的な指揮は東京都連が執っています。しかし党の総裁である安倍さんを応援に呼ぶとなると、必ず党本部の二階俊博幹事長の承認が必要になる。二階さんが負け戦の応援に安倍総裁を行かせた理由を考えてみたのですが……」

　なになに!?

池田
「二階さんが、安倍総裁を意図的に傷つけたと考えざるを得ないんですよ。安倍首相と二階幹事長の間に、何らかの摩擦があるということになる。もう少し時間が経てばギクシャクの具体的な原因が見えてくるかも知れないので、そのときはすぐにこのコラムで解説します。そしてもうひとつ、小池さんが都民ファーストの会の代表を辞任したことなんですよ」

　辞任しちゃダメなの？

池田
「小池さんが代表ではなくなると、『やっぱり彼女は国政に復帰するのでは？』と、チルドレンが不安になるんです。今回は圧倒的な“風”で当選したけど、次回は自力で当選しなければならない。しかし、あらためて自分の選挙区を見直すと愕然とするはずです。小池知事の支持者は大勢いても、自分の支持者がいないからです。私も経験しましたが、選挙をする人間はこの恐怖に耐えられない。なんとか自分自身の支持者を獲得して、足場を安定させたい」

　その気持ちはわかるな。

池田
「そこで直面するのが、地元の人たちからの陳情です。チルドレンの多くは自民党から議席を奪って当選しました。自民党議員たちは、都庁に顔が利くから支持されてきた。そんな地元の人たちからの相談や陳情を聴き、自分の支持者に変えていかないと“次”はないと思ってしまうのです」

　それじゃ前と変わらないじゃないか……。

池田
「小池さんは、都政を旧来の利権政治から脱却させたいわけですよね？　彼らが次回の選挙が不安になり、今までの自民党議員と同じような利権漁りに走ることなど誰も望んでいない。投票した人たちも、都政がクリーンになることに期待しているはずです。都民ファーストの会という集団で成果を挙げれば、自然と次の選挙でもチルドレンに風が吹くものです。しかし小池さんは党の代表を辞めてしまった。彼女はその理由として、議会による知事へのチェック機能が働かないからだと述べました。もしかしたら小池さんはキャスターとして知名度がある状態で政界に転身したから、無名の１年生議員の心情が理解できないのかもしれませんね」

週刊プレイボーイ 2017年 No.30号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.90」より

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