Last updated 2018-03-23

大臣クラスの「失言→辞任」が繰り返されるメカニズムはこれだ!!

政界で内輪ウケする大人気の話題とは?



池田
「ゴールデンウィーク前、今村雅弘“前”復興相が、『東日本大震災が首都圏ではなく東北でよかった』という、正気を疑うような失言で辞任に追い込まれました。政権にダメージを与えるような失言騒動を起こすのは、いつも大臣や政党の役員クラスです。ベテランの政治家たちはなぜいつも失言を繰り返すのでしょうか? その原因は、彼らが“不特定多数の人々”を意識して話す経験が不足していることにあるのです」

 え!? 大臣クラスになれば、選挙などで多くの人前で話す経験が豊富なのでは?

池田
「例えば地元選挙区での街頭演説は、徒歩や車で通り過ぎて行く人々の耳に数秒しか聞かれない環境です。これは単に選挙用の顔見せアピールに過ぎません。人目にはつきますが、自分の考えや功績を繰り返ししゃべるだけなので、実は“話すチカラ”を成長させる経験値にはならないんです」

企業や団体などが集まる場での挨拶やスピーチは?

池田
「そのような集まりには、だいたい地元の知事や市長、地方議員や役人などもいます。つまり毎度お決まりの面々が集まった環境なのです。このような場で政策の話ばかりをすると、『あいつは真面目だけど面白くない』というレッテルを貼られてしまい、意外とウケが悪い。逆にウケる話題は、政界の暴露話や本音トークなど、いわゆるブラックジョーク的なものです。政治家はそんな話術ばかりを身につけながらヘタに自信を深めていくので、それが大きな落とし穴になるのです」

 だんだん失言の温床が見えてきたぞ……。

池田
「大物政治家には、ちょっとしたお笑い芸人よりも面白い話をできる人がたくさんいます。しかもそういう人たちは選挙も強い。だから若い政治家は先輩を見習い、少しでもウケる話術を身に付けようと努力を重ねるのです。しかし暴露話や悪口、本音トークが通用するのは、あくまでも内輪の人々を対象としたオフレコの場に限ります。そんな当たり前の常識を、彼らはいつの間にか忘れていってしまう。初入閣の閣僚が、就任したての時期にバカな失言をやらかす例が後を絶えないのは、このためなのです」

 なるほどねー。

池田
「彼らが最も失言をしやすい地雷地帯が、政治家のパーティーです。先輩後輩や同僚の議員が数多く集まる場でスピーチができるのは、主に現職の閣僚や党の幹部だけ。初入閣した議員にとっては晴れ舞台です。得意気な気持ちと、仲間の議員同士だという気安さでついウケ狙いに走り、失言をしてしまう。まさに今回の今村前復興大臣もこのパターンでした。今後も同じようなことが必ず繰り返されるでしょう」

 大臣なのに緊張感が足りないんだよなあ。

池田
「国家の要職である大臣になってからの発言は、ニュースなどを通じて不特定多数の国民に届きます。しかし、記者会見の場で大臣の目に直接映るのは少数の記者やカメラだけ。慣れていない初心者閣僚は、カメラの向こう側にいる膨大な不特定多数の国民を意識できていないのです。だから記者たちを相手に、いつもの調子で気安く軽口を叩いてしまう。身内を相手にウケていたおバカな発言が国民を凍りつかせても、本人はブラックジョークのつもりなので『ちょっとスベっちゃった』くらいに感じてヘラヘラしちゃう。失言が問題化しても、軽く謝罪するか撤回すれば済むと思ってしまう。だから失言を真摯に詫びるという、初動の危機管理に失敗し、自分で傷口を広げてしまうのです」

 そんな意識の人たちが国家を運営しているのかあ。

池田
「政治家として我が身を守る程度の危機管理もできない人たちが内閣を構成して、現在のように不安定な情勢下の日本の危機管理を任されていることに、不安を禁じ得ませんね……」



週刊プレイボーイ 2017年 No.21号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.81」より

LinkIconIndex に戻る