「籠池問題」の争点のズレにほくそ笑む財務省
池田
「今週は、森友学園問題で争点になっている、政治家による省庁の行政への“関与”について解説します。皆さん意外に思われるでしょうが、実は共産党を除くほぼすべての野党議員も、日常業務として省庁に様々な依頼や口利きをするなどの“関与”をしているのです」
え、そーなの!?
池田
「私には、かつての日本社会党や民主党(現・民進党)の国会議員とも親交がありました。私が驚いたのは、彼らの事務所に舞い込む陳情の内容です。息子や孫の就職から、保健所に申請した営業許可を早く出させて欲しいと頼む飲食店経営者、地元で発注される公共工事に下請けでも参加できず、助けてくれないなら次から自民党を応援するぞと露骨な要求をする工務店の親方まで……」
俗物的な内容ばかりだ。
池田
「政治家に陳情するような個人や企業というと、自動的に自民党の支持者というイメージが湧きますが、実際には違う。野党議員だって選挙を戦っています。自民党を敵に回して戦う立場だからこそ、“珍しく”自分を頼ってきた個人や企業を大事にしようという気持ちは、人として自然だともいえる。だから彼らは陳情されると当たり前のように、担当する省庁に問い合わせや依頼をするのです。そして役人の対応が冷たいと、『俺が与党議員じゃないからナメてるのか? 委員会で自民党と癒着していると問題にするからな!』などと、お決まりの脅し文句を繰り出して依頼者の要望に応えようとするのです」
気持ちはわかるけどね……。
池田
「その熱意は、与党議員のそれを上回るかもしれません。そんな民主党が政権与党になった時のはしゃぎっぷりはスゴかった。私がある民主党議員の事務所を訪ねたときのことです。その議員は私がいるのも忘れ、電話してきた支持者にこう言いいました。『与党になりましたし、これからは役所も言うことをききますから、何でも言ってきてください!』と。堂々たる“口利き宣言”ですよ」
やっぱり与党になった途端に役所は言うことをきくの?
池田
「政権与党になったからといって、ヒラの民主党議員はもちろん、大臣になった連中でさえ、霞が関の省庁に働きかけや口利きをして便宜を図ってもらえたことなどありませんでした。本当は与党議員でさえ、しかもその省庁の政策に精通している場合でも、役所に陳情をすると『先生、たとえ総理からの陳情でも法令上無理です』と官僚から断られるのです。だから野党の議員たちは今でも、『やはり長い間省庁の官僚と癒着している自民党議員でないとダメなのか』と、ひねくれた勘違いをしているのです」
実態とは違うの?
池田
「違います。役所は自分たちの利益になると判断しなければ決して動きません。与党だろうと野党だろうと、大臣からの依頼だろうが動かない。しかし野党議員たちは今でも、森友学園問題で財務省が破格の待遇で国有地を売却した裏には、誰かとてつもなく政治力があって省庁と癒着している自民党の大物がいるに違いないと信じ込んでいるのです。そして面白いことに、実は与党自民党の多くの議員たちも、同じような疑問を抱いています」
どういうこと!?
池田
「安倍首相や麻生財務大臣クラスの人による働きかけがあったのだろうと、漠然と思っているのです。残念ながら、与野党どちらも不正解です。政治家の働きかけに応じて便宜を図るのも、忖度するのも、結局は省庁側の判断次第なのです。森友学園問題の本当の核心は、財務省が国有地の売却条件を国民の意思から遠いところで好き勝手にできるというシステムにある。だから今のように野党やメディアが“政治家による役所への関与”を争点にしていること自体が大間違いなのです。きっと財務官僚たちは、内心でほくそ笑んでいることでしょう」
週刊プレイボーイ 2017年 No.16号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.77」より