二階氏と鴨下氏が役所に絶大な影響力を持つ理由
池田
「最近、森友学園の国有地払い下げ問題などで、役所に対する“政治家の働きかけ”という言葉がニュースで飛び交っています。私自身、秘書時代には役所に働きかけを行なった張本人でもあるので、今週はその実態を明かしましょう」
働きかけって、実際にはどのようなやり取りなの?
池田
「誰かからの陳情が政治家に来て、それに応じる場合、本人か秘書が役所にお願いをします。しかし、官僚の返答は常に同じでした。『たとえ内閣総理大臣からのご依頼でも、無理だとお答えするしかありません』と。つまり、役所は法令に従って行政を行なっているのだから、圧力をかけても無駄ですよってことです」
まっとうな対応だね。
池田
「そう聞こえますが、もし役所に利益がある話の場合は、すぐに法の抜け穴を通す裏技を提案してきます(笑)。まさに森友学園のケースでは、安倍昭恵夫人を通じて安倍首相に恩を売っておけば、先々に税制などで自分たちの“省益”に結び付けられると考えたからこそ、財務省は自ら動いたのでしょう。決して誰かからの働きかけで動いたわけではありません」
役所は本当に総理からの働きかけにも応じないの!?
池田
「そうです。でも、本物の“族議員”は例外ですが」
族議員にニセ物がいるの!?
池田
「最近族議員と呼ばれているような政治家は、ほぼ全員がニセ物だといっていい。彼らは各省庁の専門分野に詳しい“政策通”というだけ。いくら政策を勉強しても役所への影響力にはつながりません。当選回数をいくら重ねても、大臣になっても、役所への影響力がなければ“並みの政治家”でしかないのです。逆に役所への影響力を持っていれば、役職なんてなくても族議員になれるのです」
今だと誰が本物の族議員?
池田
「現役で本物だと言える族議員は、国土交通分野と農林水産分野の二階俊博自民党幹事長、あとは厚生分野の鴨下一郎元環境相くらいでしょうか。二階さんはもともと運輸族議員でした。ところが東日本大震災後に『国土強靭化計画』の陣頭指揮を執り、被災地のみならず日本中の道路や港湾の公共工事や農業土木に莫大な予算をつけられる立場になり、役所への影響力が絶大になっていきました」
鴨下さんは?
池田
「彼は日本医師会をバックボーンにした議員で、例えばメタボ対策や禁煙対策などの予算を拡大させ、日本中の医療機関や製薬業界に莫大な利益をもたらしました。過去の人で有力な族議員といえば、旧厚生族の小泉純一郎元首相と、旧文部族の森喜朗元首相でしょう。また、省益とは違う理由で族議員になった人もいた。私が仕えていた松岡利勝元農水相です」
どうやって“本物”に?
池田
「松岡さんが当選2回の若手議員のときでした。ある大きな予算もからんだ農業政策で、当時の大物議員も含めた根回しも済んでいた案件があったのですが、松岡さんは若手議員を集め、農林部会で何日も徹夜で大暴れしてひっくり返したんです。先輩議員からの脅しや圧力にも屈しなかった。すると、その件の担当をしていた官僚が、その後の人事異動で左遷されたんです。官僚にとって、人事に影響を及ぼす人は怖くて仕方がない。官僚社会は出世競争がすべてだといえますからね」
本物の族議員の力を実感する瞬間はあったんですか?
池田
「明確にありました。その事件後、私が農水省にある働きかけをしたときのこと。『たとえ総理でも……』という決まり文句は出ず、逆に様々な法令の抜け穴を駆使して協力してくれたのです。そうして松岡さんは超大物族議員と呼ばれるようになっていった。今後、政治家の働きかけが報じられたときは、その議員が本当に役所への影響力を持っているのかという視点で見ると面白いですよ」
週刊プレイボーイ 2017年 No.14号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.75」より