朝日新聞も読売新聞も国有地を激安で入手!
池田
「今週は、国有地の『随意契約』について解説しましょう。国有地を売却する場合、通常は競争入札を経る必要があります。しかし『地方公共団体もしくは公共性がある組織』に売却する場合、随意契約で売買することができる。そして現在、大阪の森友学園が随意契約で国有地を購入した経緯が不透明で、その価格も異常に安かったことが大問題になっているわけです。安倍首相を含む政治家が財務省に圧力をかけた結果ではないかとの疑惑も報道されていますが、完全に的外れですね」
そうなの!?
池田
「国有地の不自然な売買の黒幕は、常に財務省自身です。国有財産の保有と管理をする『理財局』という部局が、国民の財産を好き勝手に扱っている張本人。政治家はおろか、安倍首相でさえも立ち入る隙がないほどの、完全な利権構造が潜んでいます。国有地とはそもそも国民全体の財産です。地方公共団体でないかぎり、特定の個人や企業を相手に好き勝手な随意契約はできない原則になっている。ところが、国有地の売却は“ある裏技”によって、例外のはずの随意契約だらけになっているのが実態なのです」
裏技って?
池田
「随意契約の対象となる、『地方公共団体もしくは公共性がある組織』の『もしくは』という部分こそが霞が関官僚たちが大好きなキーワードです。彼らの解釈ではこうなります。『地方公共団体じゃなくても、われわれ官僚が公共性があると判断するか、われわれにとって都合がいいと判断した場合、特定の個人だろうと企業だろうと、強引に理屈をくっつけて随意契約を行なっちゃいます』となるのです」
えええ~っ!?
池田
「つまり随意契約にするかどうかの判断は、財務省理財局の“意のまま”ってこと。そんな随意契約の実態を、わかりやすい前例で説明しましょう。朝日新聞社は、東京・築地市場の目の前という超一等地に本社ビルを構えています。このビルも、理財局との随意契約によって破格の安さで手にいれた旧国有地に建っています。もうひとつの巨大新聞社である読売新聞社も、本社ビルは東京都千代田区大手町1丁目という、日本一のオフィス用地にある。これも同じく、国有地を随意契約で取得したものなのです」
怪しい雰囲気だな~。
池田
「この2社が理財局に対し“新聞の公共性”を大義名分に払い下げを要求したことは政界の常識ですが、いくら公共性があるとはいえ、彼らは完全な民間企業なのです」
消費税の軽減税率でも、この2社は公共性を盾に自分たちだけ得をしようとしてたっけなー。
池田
「理財局がこの2社に随意契約で国有地を払い下げることにした本当の決め手は、もちろん公共性などではない。理財局にとって明確なメリットがあったからにほかなりません。新聞社に恩を売ることで、それ以降、財務省にとって都合がいい報道をしてもらい、逆の場合は黙っていてもらうという“暗黙の恩返し”を期待したわけです。実際、朝日と読売の2大新聞が、随意契約の問題をきっかけとした理財局のあり方を鋭く批判している記事を私は読んだ覚えがありません」
完全な癒着関係だ……。
池田
「理財局は公共性の解釈を“意のまま”に好き勝手することで、巨大な権力を得ているのです。私は、日本最大の国有地である国有林を管理している林野庁の実情にも精通していたので、実際に多くの国有財産の扱いに携わった経験を持っています。その経験から今回の解説をしています。つまり、ほかにも枚挙に暇がないほど、理財局が国有財産を私物化し、国益を害している例があるということです。本来、競争入札でも随意契約でも、国有財産の売却は財産の所有者である国民を代表する国会での審議を絶対条件にすべきだと、私は思います」
週刊プレイボーイ 2017年 No.13号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.74」より