「百条委員会」の実態は抜け穴だらけの無能機関
池田
「今週は、石原慎太郎元東京都知事の召喚で話題の『百条委員会』(都議会調査特別委員会)について解説しましょう。各メディアは、この委員会が超強力な機関であり、豊洲の問題で新事実が判明するかのように報じていますが、とんでもない勘違いです。結論を先に言うと、石原氏の責任が断罪されることなど絶対にありません。百条委員会とは、疑惑を追求する能力もない機関なのです」
え? そうなの!?
池田
「確かに、地方議会が設置できる百条委員会には、地方自治法によって刑事罰を伴う強い権限が与えられています。『召喚は拒否できない』『虚偽の証言をしてはいけない』『資料要求に応じなければならない』などの強制力があります。しかしこれをリアルな政治の言葉に翻訳するとこうなってしまう。『呼ばれたら行けばよい』『ウソはダメだが、忘れたり黙秘しても罪じゃない』『要求された資料を“のり弁状態”にしたり隠蔽をしちゃダメだが、資料そのものを捨ててしまった場合は仕方ない』という意味なのです」
えええ~っ!
池田
「百条委員会に呼ばれても、自分に都合のいいことだけを話せばいい。その程度の機関に、隠された不正の真相を暴き出したり、それを裁いたりできるはずがない。メディアが百条委員会を強力な機関だと勘違いしているのは、“現職”の知事や市町村長に対して議会がマイナスイメージを植え付ける道具として使ってきた過去があるからです。『○○市長、●●問題で百条委員会に召喚』という新聞の見出しだけで、事実は別として、次の選挙にとっては明らかにマイナスですから。しかし過去の事例を見てみると、どの市町村長や知事も刑事罰に問われたことなど聞いたことがないし、次の選挙でも再選を果たしているケースばかりなのです」
つまり百条委員会は、地方議会が“現職”の知事や市町村長を悪者に仕立て上げ、あわよくば辞任に追い込むための道具に過ぎないのか……。
石原氏は“元知事”だから、余計に怖くないワケだ。
池田
「そういうことです。豊洲問題で“逃げ回りキャラ”がすっかり定着していた石原氏が、掌を返したように強気になったのには、明確な理由があるはずです。石原氏に対し、『都合の悪いことは忘れたと言えばいいから、百条委員会など“元都知事”にとっては恐るるに足りません』とレクチャーした人物がいると、私はみています」
誰誰?
池田
「石原氏の元秘書であり、元東京都副知事の浜渦武生氏です。私は石原氏が衆議院議員だった時代から、秘書の浜渦氏も含め、非常に近い位置から見てきました。だから彼らの人となりをよく知っています。浜渦氏は、石原氏の知名度を利用して威張り散らすことにかけては天才的な人物でした」
そういう人なのか!
池田
「浜渦氏は、過去に都議会の百条委員会で偽証をした“実績”をもつ、札付きのワルです。この偽証が原因で、当時“現職”の東京都副知事だった浜渦氏は辞任に追い込まれた。しかし驚くべきことに、辞任の2ヶ月後には東京都の外郭団体に天下りした。さらに約1年後には、石原氏から東京都の『参与』という重職を与えられ、その後6年近くも居座ったのです」
なかなかの悪人キャラだ!
池田
「そんな浜渦氏からのアドバイスを受け、石原氏は百条委員会の実態を完全に見抜いたのでしょう。小池人気にあやかりたい都議会の小物たちが主導する百条委員会では力不足なのです。小池都知事は、都知事の管理下にある警視庁を有効利用するべきだと、私は思っています。疑惑まみれの豊洲新市場移転問題で、実際に承認を与えたのは石原元都知事です。石原氏の罪を本気で問いたいのであれば、小池さんは警視庁に特別チームを作らせ、問題の調査をさせればよいのです」
週刊プレイボーイ 2017年 No.12号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.73」より