Last updated 2018-03-23

「民泊新法」は国交省が利権を拡大させるための道具だった!!

国会議員の弱みを巧妙に利用して動かす官僚たち



池田
「今週は、国会で審議入り予定の“民泊新法”(住宅宿泊事業法案)について解説しましょう。最近はトランプ大統領や北朝鮮の金正男氏暗殺事件に関する報道ばかりですが、民泊新法のほうが私たちの生活に深刻な影響を与えるかも知れません」

 民泊新法って?

池田
「年間2000万人を突破するなど、急増する外国人観光客に対して日本の宿泊施設は足りていません。そこで一戸建て住宅やマンションの部屋をホテルがわりにさせる民泊を合法化しようというのです。経済の活性化にもつながるし、いい試みじゃないかと思いがちですが、とんでもない話です」

 どこがとんでもないの?

池田
「免許が不要な『届出制』であることと、住宅専用地域でも営業が可能になっていることが大問題です。想像してみてください。あなたの隣の部屋に突然、大量の外国人たちが大きなスーツケースを騒々しくガラガラと転がしながらやって来るのです。彼らは深夜でも早朝でもお構いなしで出入りする。集団で泊まり、酒を飲んで音楽を大音量で鳴らし、深夜まで大騒ぎする連中も多いでしょう。彼らが地域ごとのゴミ捨てルールをわかるはずもない。クレームを言いたくても外国語の能力が必要です。日本人の家主に文句を言いたくても、部屋を貸しているのだからその場にはいない場合が大半。日本各地の住宅街で連日トラブルが起こるのは目に見えています」

 外国人に文句を言うのはハードル高いよなー。

池田
「宿泊者がトラブルを起こすたびに家主や管理業者に苦情を申し立てるなど、ストレス以外の何ものでもありませんよ。そこらへんの問題を解決しないまま、世間的な議論も深めずに法案を成立させたい理由はなんでしょう? 実は、背後に霞ヶ関内の省益争いが大きく影響しているのです」

 役所の私利私欲が背景に!?

池田
「旅館業法などを所管し、宿泊施設を監督・指導をする役所は厚生労働省です。もし政府が民泊を推進したいのなら、既存のルールを改正して対応すればよかった。しかし今回の民泊新法、実は国土交通省の所管なんです。国交省は新たな分野に縄張りを拡大し、利権を増やそうとしているのです」

 舞台裏ではどんな戦いが繰り広げられていたのか?

池田
「国交省の官僚たちは、永田町で実に巧妙な根回しをやっていました。国会議員たちに、ある殺し文句を囁いたのです。『先生、民泊新法は、空き家問題の解決に非常に有効な一手になりますよ!』と」

 ん!? どういう意味?

池田
「空き家問題は、近年多くの国会議員が直面している難題です。議員たちは地元に帰るたび、空き家問題をなんとかしてくれと支持者たちから訴えられている。もし有効な解決法が存在するなら、彼らは飛びつきたいんです。そこで国交省の官僚たちは、選挙が頭から離れない政治家の心理をうまく利用して永田町を動かし、民泊新法の主導権を握ったのです」

 実際、民泊新法で空き家問題を解決できるの?

池田
「できません。社会問題化している空き家の大半は、税金対策でわざと放置している場合がほとんどだからです。それは国交省もよくわかっている。タチの悪い確信犯ですよ。彼らの目的はあくまで、不動産業界と同様に民泊業界を監督下に置き、関連予算を獲得したいだけ。空き家問題とリンクさせたのは、国会議員を動かすための方便だということです」

 じゃあ、宿泊施設の不足問題はどうすればいいの?

池田
「本来、宿泊施設が足りるか足りないかの問題に国が口を出すべきではありません。民間業者が長期的に儲かると思えばホテルを建設するでしょう。逆に長くは儲からないと判断すれば、投資を控える。宿泊施設の問題は、市場原理に任せて民間に委ねるべき話なのです」



週刊プレイボーイ 2017年 No.11号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.72」より

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