Last updated 2018-03-23

安倍首相は“本当のアメリカ”をまったく理解できていない!!

連邦議会選や州知事選でも共和党が勝った意味とは?



池田
「今週はトランプ政権の先行きについて解説しましょう。いろいろな報道を見ても、“今後のアメリカが不透明だ”ということしかわからないのではないでしょうか? その理由は簡単です。外交の専門家を自称する人たちも、その情報源である日本の外務省やアメリカの主要マスコミも、トランプ氏の勝利に心底驚かされた人たちばかりなのだから、先行きもわかるわけがないのです。4年後以降のことを予言すると、仮に不人気のトランプ大統領が再選されなかったとしても、より過激な人が新大統領になるだけでしょう。アメリカの保守化はもう止まりません。アメリカ大統領選と同時に行なわれた連邦議会選では、上下院ともに共和党が過半数の議席を獲得した。多くの州知事選でも、超保守派ばかりが当選しました」

 それが意味することは?

池田
「『選挙制度が原因でトランプ氏が当選したけど、得票数はヒラリー氏の方が数百万票も多いから、本当は過半数の人がトランプを支持していない』なんて論調をよく聞きますが、だからなんだというのでしょうか? アメリカの進路を決める大統領選、州知事選、上院選、下院選と、4つの重要選挙で超保守派の共和党が勝利した。決して一時のきまぐれではなく、アメリカ国民の明確な意思が正式に示された結果なのです」

あらゆる選挙で共和党が圧勝したことによる影響は?

池田
「実は共和党も民主党も、国益を最優先させるという基本的な方針は同じなんです。ただその手法が違うだけ。国際協調を重視するのかしないのかなど。そして昨年秋、『ほかの国など放っておいて、とにかくアメリカの豊かさと強さを回復してくれ!』という国民の意志が選挙で正式に示されたのです。だからトランプ氏個人の資質はどうあれ、アメリカ全体が進む方向性に変わりはないのです。過激にも思えるトランプ氏の政策は、すべてじゃなくても多くは実行に移されるでしょう」

 そりゃ大変だ……。

池田
「共和党が超保守だと言いましたが、民主党も保守なのです。違いは“保守の度合い”だけ。日本って、自国の国益を損ねてでも他国の利益を追求したり、国際貢献をしようとするでしょう? アメリカには日本のような、国益を度外視した政策を掲げる政党など基本的に存在していません。約20年前、私は多国間の通商問題を話し合う『GATTウルグアイラウンド交渉』のため、アメリカの上院議員たちを訪ねて日本の立場を説明して回る経験をしました。その際に共和党と民主党の上院議員たちが同じようなことを言っていたのが、強く印象に残っています」

 彼らはどんなことを?

池田
「『日本の国会議員が日本の立場を訴えるのは当然だが、われわれには何の関係もない』とか『世界のためにアメリカがどうするべきかについて、他国人からのアドバイスは求めていない』『もしアメリカとアメリカ人の利益がほんの少しでも損なわれるのであれば、われわれにとっては交渉をする意味すらない』という趣旨のことを言っていました。つまり、共和党も民主党もアメリカ・ファーストの考え方に違いはないのです。そして大統領選、上下院選、州知事選のすべてで共和党が勝ったということは、自国を最優先させた政策を実行するスピードと激しさが増すことを意味しているのです」

 日本はどうすればいいの?

池田
「安倍首相はトランプ氏と面談した際、TPPからの離脱を踏みとどまるよう、国際協調の重要性などという正論を振りかざして説得を試みました。トランプ氏は内心で、『コイツ、誰に何を言ってんだ?』と笑っていたことでしょう。アメリカがアメリカを第一に考えて行動する方向性はしばらく変わらない。日本は、自国が進むべき道を、自分たちの意思で真剣に探すべき時期にきているのです」



週刊プレイボーイ 2017年 No.8号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.69」より

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