オバマより最悪な大統領を探すことは非常に困難……
池田
「ついにドナルド・トランプ氏がアメリカの大統領に就任しましたね。今週は、トランプ大統領を誕生させる土壌を作ってしまった、オバマ前大統領の功罪を総括したいと思います。結論から先に言うと、オバマ氏はアメリカ史上でワースト3に入るほど、稀にみる無能で最悪な大統領でした。今後トランプ大統領が、世間の“予想通り”に失策を重ねたとしても、オバマ氏よりも世界を混乱させることは不可能だろうと言えるほどのレベルです」
そんなに最悪だったの!?
池田
「多くの方が意外に思われるかもしれませんね。もしオバマ氏がまともに見えるとしたら、それは彼が唯一持った才能である、演説の上手さが生んだ幻想にすぎません。特に最後に行なった演説と、その翌日に行なわれたトランプ氏の記者会見とのコントラストは、オバマ氏が良い大統領だったとの印象を世界に与えたことでしょう。しかし政治家とは、特にアメリカの大統領は、人間性ではなく結果が問われる立場です。オバマ氏が残した結果を冷静に見てみると、彼がどれだけ無能で、どれだけ世界を大混乱に陥れたかが理解できると思います」
オバマが残した結果って?
池田
「中近東の大混乱、EUの弱体化、テロの大増殖、ロシアの先鋭化、そしてアジアの不安定化です。まさに負の遺産ばかり。最近はトランプ氏のツイッター発言が物議を醸していますが、オバマ氏がSNSを通じて混乱を助長した『アラブの春』に比べれば、まったく問題になりません。オバマ氏による軽率で偽善的なつぶやきが原因で、中近東は一気にカオスと化したのです。政治的にも経済的にも安定していたチュニジアやエジプト、リビアが、オバマ氏のせいで今も混乱が続いている。そのアラブの春が原因でシリア情勢は深刻化し、今も悲惨な状況のままです」
そう言われてみれば……。
池田
「そのシリアから大量の難民が流入してヨーロッパは混乱し、弱体化が止まりません。さらに、シリアのアサド政権を支持したくないドイツを中心としたEUの思惑に安易に乗っかり、反政府主義勢力という名のテロリストたちに大量の武器と弾薬を提供し、混乱が深まり収集がつかなくなった。挙句の果てにその混乱が、敵対するロシアとイランの力によって鎮静化されたというお粗末ぶりです」
確かにそうかも。
池田
「さらにクリミア半島問題でも致命的なミスを重ねた。クリミア半島の大多数を占める親ロシア派住民を保護するために軍隊を動員するという、プーチン大統領からすれば極めて自然な政治決断に対して、オバマ氏はロシア側の言い分を聞くこともなく、非人道的だと責めたてて経済制裁を行なった。それに追従した日本まで、ロシアから敵視されるようになってしまいました」
日本にも巻き添えか……。
池田
「そこは日本の外務省が無能なだけです。ロシアへの経済制裁に参加しておきながら、北方領土が返還されるのではないかというトンチンカンな期待を持ってしまう連中ですから。それよりも日本がアメリカから受けた最大の被害は、アジア情勢の不安定化です。オバマ政権は自国の経済的なメリットを優先するあまり、中国の膨張政策を放置し続けた。おかげで東シナ海の日中中間線は有名無実化し、日本の領海と領空は侵犯され放題。中国による東シナ海の内海化はほぼ完成し、南シナ海にまで勢力が拡大しました」
本当に最悪だ(怒)!!
池田
「北朝鮮の核武装化だって止められなかった。そんなオバマ政権に100%追従したのが日本外交です。外務省の上層部は北米局出身者ばかりなので、オバマ政権が世界を混乱に陥れたという事実も理解できていないでしょう。そんな連中がトランプ政権の先行きを見通せるはずもない。来週は、無能な外務省の代わりに、トランプ政権の未来を予測したいと思います」
週刊プレイボーイ 2017年 No.6号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.67」より