Last updated 2018-03-23

「アスリートファースト」という発想が間違いの始まりだ!!

日本の税金の使い道に口を出すIOCの横暴



池田
「今週は、東京オリンピックの会場問題について解説します。結局、バレーボールの会場以外は原案のままという決着でしたね。もちろんコストを圧縮できたことは一定の成果ですが、多くの都民と日本人は、このドタバタ劇は一体何だったんだろうという感想を持ったのではないでしょうか」

 勝負の分かれ目はどこだったんだろう?

池田
「オリンピックの問題に関しては、スタート地点から間違っていたと思います。小池百合子都知事は『都民ファースト』というスローガンを掲げて都知事選で圧勝しました。都知事が都民を第一に考えて行動するという宣言は、至極当然のことです。しかしその小池さんが、オリンピックの話題になると『アスリートファースト』と言い出したのです。これこそが間違いの始まりなのです」

 どこが間違っているの?

池田
「近代オリンピックは、古代ギリシアのオリンピア競技をモチーフにしています。古代ギリシア時代は国の規模が都市国家単位だったので、現在も都市開催という建前になっている。でも実際には、オリンピックは国家的なイベントです。民主主義国家で行なわれる国家行事は、絶対に国民ファーストである必要がある。たった数週間の大会で競技をする、日本国民全体の0.01%にも満たない人数のアスリートが主役だという考え方そのものが大間違いなのです」

 そう言われてみると……。

池田
「開催地の代表者である小池さんがそんな言動なので、マスコミも勘違いしてしまった。極めて競技人口の少ない種目の選手たちが『立派な施設でやりたい!』と訴える姿を、彼らは大々的に報じ続けた。その影響で、視聴者である国民たちは、何百億円もの競技場を税金で整備しろと要求するアスリートや競技団体の言い分が正当なものなのだと勘違いしてしまうようになったのです」

 そんな空気も感じるね。

池田
「挙げ句の果てに、IOC(国際オリンピック委員会)やオリンピック組織委員会などという、国や東京都の税金の使い道を1円たりとも決める権利のない組織にまで口を出され、国民や都民は振り回されたわけです。たった数週間のイベントのために開催都市や国が負担する数兆円もの費用は、到底オリンピック終了後に競技者たちが払う施設利用料などで回収できるような額ではない。歴代の開催都市はみな、レガシーと言う名の『負の遺産』の扱いに苦労しているのです」

 だんだん腹が立ってきたぞ(怒)!

池田
「この国では、選挙を経ていない一部の人間が、責任も取らないくせに重要な意思決定を行なっています。東京でも国家の中枢でも、あらゆるレベルで同じことが起きている。民主主義とは“決める人をみんなで選ぶ”システムであって、決して“みんなで決める”システムではありません。今回のオリンピック問題や豊洲新市場の問題は、この国が抱える構造的な欠陥を日本人全体が認識して、それを克服できる絶好のチャンスでもあったのです」

 小池さんはどう立ち回ればよかったのだろう?

池田
「小池さんは東京都民から圧倒的な信任を受けたのだから、何でもできる強い立場なんです。例えば、交渉の結果次第ではオリンピックの開催権を返上したって構わないと、IOCやオリンピック組織委員会を恫喝するくらいの強い態度に出ることだって可能だった。そうすれば、会場問題でも都民ファーストを達成できたでしょう。豊洲の新市場も、顔の見えない連中の決定で生まれた不良品です。もし小池さんが6000億円もの建築費を無駄にしてでも白紙に戻す前例を作れれば、日本の意思決定システムに風穴が開くでしょう。本当の意味で国民ファーストを実現できるシステムこそ、今の日本には必要なのです」




週刊プレイボーイ 2016年 No.51号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.62」より

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