Last updated 2018-03-23

ボート場が宮城に決定すれば復興予算の深い闇が明るみに!?

埼玉が誘致に熱心じゃなかった意外なワケ



池田
「今週は、東京オリンピックのボート競技場問題について話しましょう。東京の海の森水上競技場、埼玉の彩湖、宮城の長沼ボート場……。メディアや専門家たちは建設費や各種団体の意向などに集中して批判しています。しかし、それだけではオリンピック利権の
真相は見えてきません。それぞれ誰が得をするのかという視点で見れば、全貌が見えてくるはずです」

 海の森の場合は?

池田
「建設現場が海と埋立地のため、儲かるのは『マリコン』と呼ばれる海のゼネコンです。それから海や河川での工事設計が得意な設計会社。そして、汚水処理のプラントメーカーも、さらなる予算規模の拡大を虎視眈々と狙っています。そしてもちろん、業者への発注額を膨らませた予算案を成立させることで甘い汁を吸える、都議会のドンとその仲間たちも含まれる。予算の付け替えなどでゴマかしていますが、確実にトータルで1000億円を超えるでしょう」

 埼玉の彩湖は?

池田
「彩湖を含む荒川第一調節池は、国土交通省が管理する国有地です。競技場候補地としての誘致活動で宮城に遅れをとった原因はここにあります。競技場が彩湖に決まった場合、工事は東京都や埼玉県ではなく、国交省の『水管理・国土保全局』の主導で行なわれる。つまり、会場整備や予算の獲得で得をするのは、地元の政治家や業者、埼玉県ではなく、主に国の公共工事を受注しているゼネコンやマリコンなのです。ここらへんが、埼玉県の上田清司知事や埼玉県議会が誘致に積極的ではなかった理由でしょう」

 自分たちに得がないから消極的だったのかー。工事費は?

池田
「3ヶ所のなかでは圧倒的に安く済むと思います。メディアでは最も高くなる試算額が報じられていましたが、実際にはその逆です。海の森にしたい東京都が、意図的に高い試算額を出しているだけ。逆に海の森の予算額は、正式決定したら、まだまだ上がると思いますよ」

 最悪だ……。宮城の長沼はどうだろう?

池田
「宮城が最も高額になると思います。なぜなら、莫大な復興予算があるからです。おそらく表面的な建設費は低額に抑えておいて、周辺道路の整備や護岸工事など、お金のかかる予算を復興予算に付け替えてゴマかすはずです。トータルで最も高くなるのは宮城でしょう。一番儲かるからこそ、宮城にしたい人たちの数も多いのです」

 宮城では誰が儲かるの?

池田
「東日本大震災以降、実にに30兆円以上もの復興予算が被災地に注ぎ込まれてきました。しかし本当に効果的な使い方はほんの一部で、大部分が無駄遣いだというのが実態なのです。復興予算は、実はかなり闇が深い。震災以降の5年半で甘い汁を吸い続けてきた地元の土木建設業者や政治家たちが、さらなる大儲けを狙って積極的に誘致活動をしているのです」

 でも地元住民に恩恵があるんだよね?

池田
「残念ながら、長期的に見ると地元住民にも得がない。東京都庁にも埼玉県庁にも宮城県庁にも、公共工事の建設費を正確に計算できる職員がひとりもいないため、ゼネコンとグルになっている設計会社が高額な見積額を提示しても、その額が妥当か不当かの判断をする能力が役所にない。だから業者からの言い値で発注する羽目になる。必要以上に高額な施設は維持・管理費も高額になるため、無駄な税金が継続的にタレ流されることになり、その負担は地元住民や日本国民にのしかかるのです」

 どこもダメなのかぁ……。

池田
「私は個人的に、あえて高額な宮城の長沼になればいいなと思っています。なぜなら、今後も現在のように国民的な高い関心が続けば、復興予算の深い闇もマスコミによって暴かれることが期待できるからです。30兆円の大部分が無駄遣いされた実態が明らかになれば、国民の怒りは頂点に達するでしょう」





週刊プレイボーイ 2016年 No.45号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.56」より

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