TPPを推進した黒幕は反日的な財界人だった!
池田
「今週は、会期中の臨時国会で審議されるTPPについて解説ましょう。東京・築地市場の豊洲移転問題よりも、日本人の生活にとって遥かに深刻な問題だからです」
どこらへんが深刻なの?
池田
「問題の根幹は豊洲新市場問題とまったく同じ構図です。TPPへの参加を、いつ、誰が、どのような国益を見込んで言い出したのか、その経緯も根拠もよくわからない。だから将来にTPPで日本が大損をしたとき、いったい誰に責任があるのかが曖昧なままなのです。」
あらためて、TPP参加のメリットって?
池田
「ありません。輸出業は得をするとか、東南アジア市場で有利だみたいなことがよく言われていますが、全部ウソです。日本はすでに、東南アジアのTPP加盟国とそれぞれ二国間の経済連携協定を結んでいる。だから“二重に”協定を結ぶことのメリットなんてないのです。しかも、タイやインドネシアにおける日本車のシェアは、すでに約90%もある。ほかの日本製品の浸透度も圧倒的。TPP参加で輸出産業がこれ以上儲けることなど不可能なのです」
変更点はアメリカが加わるかどうかってことだけか。
池田
「そうです。TPPへの参加とは事実上、アメリカとFTA(自由貿易協定)を結ぶことを意味します。アメリカとFTAを結んだ国々は、みな悲惨な末路をたどっている。カナダやメキシコはアメリカの植民地のようになってしまった。お隣の韓国は、2012年にFTAが発効してたった1年で畜産業の約7割が廃業に追い込まれ、焼肉大国なのにアメリカ産の牛肉だらけになってしまった」
日本にとって得がないTPP参加を誰が推進しているの?
池田
「日本のTPP参加を唐突に言い出したのは、当時の菅直人首相です。しかし彼に、日本の国益や外交戦略などという観念があるはずもなく、実際に政府を動かした中心人物は、当時の経団連会長、米倉弘昌氏でした。彼は住友化学の元会長で、反日本的な言動が目立つことで知られる人物です」
経団連メンバーの大企業は得をするの?
池田
「そういうことです。特に製造業が。彼らは今、労働力不足に悩んでいます。だったら日本人を正規雇用すればいいじゃないかと思うのですが、賃金の安い外国人労働者を雇いたいのです。移民を大量に受け入れ、雇用市場を自由化させたいのです。たったそれだけのために、日本の医療、保険、金融分野などは大損してもいいと思っている。自分たちだけが得をすれば、日本の国益も、自社の日本人社員されも犠牲になっていいと思っている。国賊としか言いようがありません」
ヒドイ話だなあ……。
池田
「ただ、まだTPPへの参加を見送るチャンスは残されています。アメリカの大統領選で、クリントンもトランプもTPP不参加を訴えているからです」
アメリカは得をする側なのに、なんで!?
池田
「アメリカの製薬業界と畜産業界が反対しているからです。大統領選にあたって、製薬業界はカネ、畜産業界は票で、大きな影響力を持っている。接線状態の両候補は有力な業界団体を怒らせたくない。ただ、選挙が終わってしまえば、どちらの候補者が勝っても、TPPに参加する方向に進むと思います。アメリカ全体の国益を考えれば、圧倒的に得なのですから」
てことは、選挙結果が出る前の今がチャンスってこと?
池田
「そうです。『アメリカの参加が不透明だから』という理由で、一度立ち止まればいい。国民にTPPの内容に関する詳細な情報を公開した上で、再検討すべきなのです。今回の臨時国会ではTPP関連法案の採決を見送り、継続審議にしておけばいい。小池百合子都知事が危うい豊洲新市場にストップをかけたたように。果たして安倍首相にその勇気があるでしょうか?」
週刊プレイボーイ 2016年 No.42号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.53」より