Last updated 2018-03-23

小泉、森、石破、二階……族議員誕生の意外な「過程」とは

何もかも忘れるほど最高な大臣生活の



 現在、国会は夏休み期間。以前までは「外遊」と呼ばれる海外旅行に行く議員が多かったけど、最近は聞かないね。

池田
「世間からの批判が高まり、外遊に出かける国会議員はほぼ絶滅しました。
その代わり、みんなそれぞれの地元に帰って選挙活動に励んでいますね」

 でも、8月末に来年度予算の概算要求が各省庁から出され、秋の臨時国会では4兆円を超える規模の補正予算が組まれる。
 ヒラの国会議員はともかく、大臣は忙しい時期じゃないの?

池田
「大臣もヒマです。
8月の内閣改造について解説した回でもふれましたが、入閣する議員本人には最後まで知らされないのに、各省庁の官僚はかなり早い段階から閣僚人事を把握している。
だから新大臣に辞令が通達された5分後には、官僚たちが事務所まで挨拶に来て、就任会見用の原稿も完成済み。
新大臣は何も考えないまま、役所側の論理で作られた原稿を読み、就任初日から役所の利益を代弁する日々がスタートする。
巨額な予算案を作成するプロセスに、最高権力者である大臣が関与していないのです。
最初は疑問に感じる人もいるようですが、実際に大臣生活が始まっちゃうと毎日が気持ち良すぎて、いろいろなことがどうでもよくなるみたいですね」

 気持ち良すぎるって!?

池田
「豪華な大臣室が用意され、運転手つきの専用車が与えられ、常時SPがつく。
空港や駅では、大企業のトップがVIP室だと思っているものとは別次元の“超VIP室”が用意され、乗り降りの際も航空会社や鉄道会社の担当者がつきっきりで、一般客とは違う特殊なルートで出入りできる。
現地に着けば各都道府県警のパトカーに先導される。
海外に行けば日本大使館の外交官がマンツーマンでお世話をしてくれ、税関や入国審査もフリーパス。
イベントや会合では、例えばトヨタの社長やメガバンクの頭取よりも格上の席が用意され、スピーチの順番も先。
『大臣になる前は本当にペーペーの議員だったんだな』と痛感させられるような、圧倒的な優越感を、毎日味わえるのです。
こうなると、行政改革を断行する意欲なんて起きやしませんよ」

 役所の利益をひたすら代弁し続けた大臣には、退任後もおいしい思いが待っているという。

池田
「大臣は役所の最高権力者ですが、在任中は、関係する業界から献金を受け取ることも影響力を行使することもできない。
しかし現職大臣の間は余計な改革をせずにひたすら省益を守る立場を貫けば、役所からの恩返しが待っている。
『あの先生はウチらの味方だったな』と思われ、退任後、監督下にある業界団体や企業から様々な支援を受けられるよう、水面下で取り計らってくれるのです」

 具体的には?

池田
「政治資金パーティーの場合、官庁から族議員として認められた途端、その業界からの集金力が10倍以上になります。
特定の業界への影響力が強まれば、例えば企業への就職斡旋も容易になり、地元有力者の子弟を大企業に就職させて感謝されれば、選挙の際には組織票や資金で恩返ししてもらえるようにもなる。
私の知る限り、その省庁や業界に絶大な影響力を持つ政治家で、その役所の改革に積極的だった人なんて、ただのひとりも存在しませんね」

 おいしいなぁ~。最近では、誰が大物の族議員なの?

池田
「小泉純一郎さんは超強力な厚生族議員でした。森喜朗さんは文教(文部科学分野)族議員。
現職で言うと、石破茂さんは防衛族議員でもありながら、強力な農林族議員でもある。
そして現役最強は、間違いなく自民党幹事長の二階俊博さんでしょう。
彼はもともと運輸族議員でしたが、東日本大震災後に『国土強靭化』を推進して大規模な公共事業予算を獲得し続け、建設、農業土木、漁港分野にも縄張りを拡大し、今や国土交通と農水の全分野をカバーするスーパー族議員になりました」

 小泉さんや石破さんが族議員って、意外な感じがするね~。


週刊プレイボーイ 2016年 No.38号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.50」より

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