東京五輪の観客席は高齢者だらけになる?
池田
「リオオリンピックでは、日本勢の大活躍はもちろん、世界中のトップアスリートたちが繰り広げる熱い戦いに感動しました。
しかし4年後の東京大会を思うと、スポーツファンとして非常に楽しみなのと同時に、暗澹たる気持ちにもなってしまいます。
なぜなら、安倍政権がオリンピックの経済効果に過剰な期待を寄せているからです。
先に断言しておきますが、オリンピックが日本経済全体に寄与することはほとんどありません」
ど、どーいうこと!?
池田
「自国開催のオリンピックを最大限に活用したい人たちは、大きく分けて3者います。
『メディアと企業』、『東京都』、『永田町の政治家』です。
メディアと企業に関しては、高額な放映権料やスポンサー料を払うので、どれだけポジティブに盛り上げても問題はない。
彼らは利益追求団体なのだから、当然の行動です」
東京都に関しては?
池田
「東京都は人口、予算規模ともに、スウェーデン1国に匹敵する巨大都市です。財政的にも黒字で豊か。
だから都議会や都庁といった、予算を決める側の金銭感覚が非常にルーズです。
したがって無軌道な予算の膨張を許してしまい、そこに巨大な利権が発生する。
オリンピック予算を大きな争点として勝利した小池百合子新都知事は、徹底したコストの管理と透明化を行なうことが必要でしょう」
一番の問題は永田町ですね?
池田
「そのとおり。
彼らはオリンピックを契機として、日本経済が復活するかのような幻想を国民に抱かせようとしている。
大間違いです。
外国人観光客がたくさん来日するといったって、たった2週間の話です。
今後いくつかのホテルが開業しますが、外国資本のホテルばかりで利益はあまり日本に落ちない」
でも、オリンピックの熱狂を“生で”感じられるのは、国民にとって財産なのでは?
池田
「実際には多くの国民が生では観戦できず、テレビで観戦することになるでしょう。
第一の理由は、チケットの問題です。
多くのチケットは協賛企業のスポンサー枠で確保され、希少化します。
これは、チケットが完売なのに空席が目立つ現象の温床にもなっています。
一般販売枠は抽選となり、もちろん入手困難。
抽選に当たらなければオークションでの入手になりますが、その価格は異常に高騰するでしょう。
なぜならサッカーW杯などと違い、オリンピックは日本の高齢者が大好きだからです。
彼らはヒマとお金を持て余しているうえ、老い先も長くないので、“一生の思い出に”と、価格がいくらでも購入してしまう。
チケット価格の相場は、10万円超えなど、日韓W杯時の数倍に高騰してしまうでしょう」
ペアチケットで20万円超えはキツイなあ……。
池田
「宿泊費も高くなる。
ただでさえ、東京の宿泊費は近年の外国人観光客急増で高騰している。
本来は数千円で泊まれたビジネスホテルでも、最近は2万円近くもしたりする。
オリンピック期間中ともなれば、10万円を超えるでしょう。
もし関東以外に住む人が自分の子供に生のオリンピックを体感させたいと思っても、家族4人でチケット代と宿泊費とで50万円を超えるとなれば、誰が行けるのか?たった1泊で計算した場合でも、です」
確かに……。
池田
「実際の東京オリンピック会場は、税金から捻出される高額な年金で悠々自適な生活を送る高齢者が埋め尽くす。
現役世代は、高齢者を支えるための重税に苦しみながらテレビ観戦するしかないのです。
それなのに安倍政権は、何年経っても効果の出ないアベノミクスの失敗から国民の目を逸らすため、オリンピックがもたらす経済効果と言う“幻想”を道具に使っている。
それよりも、年間30兆円を超えている上に毎年1兆円も増え続ける社会保障費を削減した上で減税したほうが、何十倍も経済効果があるのです」
週刊プレイボーイ 2016年 No.36号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』vol.48」より