Last updated 2018-03-23

日本の財政、目からウロコの新経済学!

日本の財政は破綻する?しない?この論争を今すぐに終わらせよう!!


日本の財政赤字は、国と地方を合わせ1000兆円を超えている。
当然、このままでは確実に財政破綻まで行く着くという声は大きい。
しかし一方で、「日本の借金は国内での貸し借りだから、何も心配いらない」という意見も根強いことをご存知だろうか?
どっちが正しいのか?
こんなに日本の根本的な話なのに、専門家の間でも意見が分かれるってどういうこと!?

てことで、『政界斬鉄剣!!!』が好評連載中の政治評論家、池田和隆氏に聞いてみると、単純明快で目からウロコな解説をしてくれたぞ!!

「国の借金=国民の借金」は大ウソ!政府の巧妙な誘導に騙されるな!!


 最初に、既存の財政赤字論争について、ふたつの意見をサラっとまとめておこう。

【日本の借金ヤバイ派】

国の収入が約50兆円なのに、100兆円近い支出を続けるために毎年借金(国債)を増やして大丈夫なはずがない。
しかも年間30兆円を超える社会保障費は、高齢化で今後も毎年1兆円ずつ増加していく。
今すぐに財政を再建しないと破綻してしまうという意見だ。

【日本の借金は大丈夫派】

 代表的なのは、過去に麻生太郎元首相も語っていた、以下のような考え方だ。

「このままでは日本もギリシャのようになるという意見があるが、ギリシャの場合は国債の約7割を外国人が買っていた。
でも日本の場合、国債の9割以上は日本人が買っている。つまり、 “家庭内の貸し借り”にすぎない。日本政府が日本人から円で借りているのだから、政府が円を印刷して返せばいいだけの話!」
しかも日本は個人の金融資産が約1700兆円もあるから国の信用度も高く、国債の金利も低いまま抑えられるという意見だ。

 こうして両者の意見を聞くと、両方とも正しく聞こえてきちゃうんだけど……。

池田
「まず言いたいのは、霞ヶ関の悪意に満ちた言葉遊びに騙されるなということです」

 どういうこと?

池田
「よく『国の借金』って言うでしょ? まず、これが大間違い。正しくは『政府の借金』です。
国とは、国民も国土も政府も含んだ存在です。政府はあくまでも国の一部。

これを財務省とマスコミは、意図的に『国の借金』という言葉に誤変換してきた。
その目的は、”政府の借金”を、あたかも”国民全体の借金”のように思わせるためです。」

 なるほどぉ!

池田
だから数年前まで、マスコミはこぞって『国の借金時計』なるものを紹介し、“国民ひとり当たりウン百万円の借金”などと国民の危機感を煽りまくっていた。

しかし大前提として、国民は銀行や郵便への預貯金を通じて、政府にお金を”貸している側”なんです。
逆に言えば、金融機関は預金者からの借金で国債を買っているわけ。
つまり、国民は借金を返すどころか、政府から返してもらう側なのです」

 確かに、子や孫の代にまで及ぶ国民全体の借金みたいなイメージが浸透してるよなあ。

池田
「それこそが財務省の狙いです。日本人の集団意識の強さを利用し、借金の主体を”政府”から”国”にすり替えることで、債権者であるはずの国民が債務者の意識にされている。

そうなれば、痛みに耐えてみんなで返そうとなりますからね。そうして”増税もやむなし”という空気にすることこそ財務省の狙いであり、実際にそうなっていますよね」

財務省の狙いは相続税だった!!


財務省っておっかない!


池田
「いえ、財務省の本当の恐ろしさはここからです。数年前までは財政破綻の危機を、マスコミも巻き込んであれだけ宣伝していたのに、最近は静かだと思いませんか?」

 まさか、それも財務省の意図的な策略なの!?

池田
「そのとおり。財務省はもうすぐ大きな収入が見込めるから静かになったのです。
日本の個人の金融資産約1700兆円のほとんどが高齢者のものですが、彼らがこれから亡くなることで、ジャブジャブと相続税が入るんですよ。資産額にもよりますが、半分くらい巻き上げられる。
実はそれに向け、生前贈与がやりにくくなる法改正もヒッソリとやっていたりします」

 でも、ここまで膨らんじゃった借金は、やはり一度チャラにしたほうが未来の負担も減って得策なんじゃない?

池田
「そういう考えに至るのも財務省の思惑どおり。
なぜなら、相続税は”高齢者が払う”のではなく、”受け継いだ現役世代が払う”お金だからです。」

 あー、確かに!

池田
「そもそも高齢者の預貯金は、所得税や消費税の納税後に蓄積したもの。死後に相続税として再徴税するなんて、二重三重にお金を巻き上げる行為で、暴力団にも劣るとんでもない政策です。

しかも、日本国民が持つ膨大な金融資産は、国際金融市場における日本の信用を支えている根幹なのです。
これを大幅に減らしてしまったら、国の国際的信用まで低下させてしまう。そうなれば国債の金利がハネ上がり、国力も低下し、財政破綻に向けて一直線です」

 財政赤字の議論がいつもわかりにくいのは、財務省が危機感を煽ったり静かになったりと態度をかえるからか!

池田
「財務省の目的はひとつ、増税したいだけ。
その目的のために危機感を演出したり、相続税狙いに気づかれないように黙ったりして、混乱の原因をつくっているのです」

 財政再建のため、本当にやるべきことはなんだろう?

池田
「まずやるべきなのは、相続税で国民の金融資産を奪うことではなく、歳出削減しかないんです。

最近の日本の年収は約50兆円。
国債の償還額が毎年10兆円以上あるので、真水の予算は40兆円弱です。
そのうち社会保障費が30兆円以上で、今後も毎年1兆円ずつ上昇していきます。
ここをバッサリ削るしかない。

話をわかりやすくするため、家計で考えてみましょう。
といっても”兆”を”万”に、”年”を”月”にするだけですが。

月収が50万円で、家のローンが10万円。
さらに医療費や保険の掛け金が30万円以上ある。
でも、それじゃ生活費も遊び代も足りないからって毎月50万円ずつ借金をし続けて贅沢な暮らしを続けている。
ただし貯金は1700万円ある。

この場合どうすればいいと思いますか?」

 浪費をやめなければ、貯金はなくなるだけだよなあ。

池田
「ですよね。そもそも1700万円の貯金があるから、月収50万円なのに毎月50万円も借りられているのです。
しかしその貯金がなくなれば誰も貸してくれなくなる。
だから今の生活を続けたら、金持ちから一転して破産してしまうんです。」

公定歩合復活で金利を上げればお金が回り始める!!


 何か方策はない?

池田
「日銀主導で金利を上げることです。

日本経済の停滞の原因は、お金があるのに回っていないことにある。
つまり、個人が消費をせず預貯金に回し、そのお金を預かる金融機関は誰にも融資していない。

例えば、5000万円の貯金を持つ70歳の人がいたとしましょう。
今の長寿社会では自分が何歳まで生きるかわからない。
もし100歳まで生きれば、まだ30年もあるから、そりゃあ貯金が減るのは不安です。

でも金利が5%になれば、利息だけで年間250万円になる。
この増えた分くらいは安心して消費するでしょうから年金を大幅に減額しても、ほとんどの高齢者は困らない。
当然、本当の弱者はケアをすべきです。

一方、金融機関も、金利が上がれば預金者に支払う利子が増えるため、必死に借り手を探す必要が生じる。
中小零細企業へも、融資の営業に走り回る。
そして貸した金を回収するため、その企業の経営支援も銀行がやる。

そんなサイクルが、かつての強い日本を支えていたのです。」

 でも、そうなると国債の金利も上がり、やっぱり財政が破綻しちゃうんじゃ?

池田
「だから歳出削減なんです。
ちゃんと自分の収入を見つめ、身の丈にあった生活をすべきなのです。
借金で収入の倍の生活を維持する発想がクレイジーなのです。

もともと、日本の法律は赤字国債を禁止しているんですよ(利益が子や孫の代まで及ぶ公共事業目的の建設国債はOK)。
それを約50年前、故・福田赳夫元首相が大蔵大臣のときに『特例公債法』を作ってからおかしくなった。

当時は東京オリンピック直後の急激な景気悪化を乗り越えるための“特例”だったんですが、その後、自制心のない政治家と役人が恒常化させてしまった。

ただ、政府が収入額の倍の支出をしているということは、国民が納税額以上のサービスを受けていることも意味していると、われわれは理解すべきです」

 僕らも身の丈にあったサービスで我慢する心を持つべきなのかな。
 次の選挙では、正しい財政再建計画を示す党が現れればいいんだけど……



週刊プレイボーイ 2016年 No.19・20合併号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』特別編( vol.33)」より

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