Last updated 2018-03-23

不利益だらけのTPP。今からでもまだ引き返せる!!

韓国の畜産業はたった1年で70%が廃業……


池田
「通常国会も後半戦。最大の目玉はなんといっても、TPP関連法案の審議です。日本の未来に深刻な影響を与える法案ですから、もっと注目して欲しいところですが……」

 今さらもうどうしようもないと考えてる人も多いが。

池田
「いいえ。政治が決断さえすればTPPからはいつでも離脱できます。その決断を促すのは国民の声。大多数の国民が反対だとわかれば、政治家は選挙で負けたくはないので、今からでも変わる可能性は十分にあります。」

 やっぱりTPPはダメなの?

池田
「そもそもTPPへの参加を言いだしたのは民主党政権時代の菅首相です。当時の自民党は大反対していた。政権交代を果たした2012年の選挙でも、自民党はTPPに反対の公約で戦い、勝利したのです。それなのに安倍政権は手のひらを返し、TPP推進に転じた」

 やはりアメリカからの圧力?

池田
「違います。もともと、TPPへの参加要請を言いだしたのは経団連です。当時の菅首相は自民党の強力な支持母体である経団連を味方につけるため、TPPへの参加意思してしまったのです。TPPで得するのは一部の輸出産業だけ。しかし、日本のGDP比で輸出産業が占める割合はたったの17%。ほとんどの国民に関係がない。当時は霞ヶ関も大反対していたほどです。しかし安倍政権がTPP推進路線をとったことで、霞ヶ関の役人もへたに逆らうと出世に響くからと賛成に転じたのです」

 でも、なんで安倍政権はTPP推進へと豹変したの?

池田
「経済界の一部の意見を真に受けたのです。アベノミクスは徹底した大企業優遇路線です。大幅な円安政策もそう。経団連は輸出産業の割合が高い団体ですから。そのために原油や食料をはじめとする輸入品の価格が急上昇して国民生活が圧迫されてもお構いなし。その対価として大企業に給与をアップさせ、アベノミクスが順調だと思わせる協力をさせた。でも、日本経済の大部分にとっては、TPPも円安も不利益でしかないのです」

 TPP法案がこのまま進むと、日本はどうなっちゃうの?

池田
「TPPは多国間協定なので感覚的にわかりにくいのですが、結局は二国間の自由貿易協定であるFTAの集合体です。アメリカとFTAと結んだ国はみんな大損をしている。カナダやメキシコやアメリカの植民地のようになってしまった。お隣の韓国はアメリカとのFTAが13年に発行した途端、たった1年で国内の畜産業の約70%が廃業に追い込まれた。焼肉大国で知られる韓国ですが、現在はほとんどが米国産牛です」

 では日本でも同じことが?

池田
「高級ブランド牛は生き残るでしょうが、安くておいしい和牛は消える。日本人のソウルフードであるラーメンを支える豚や鶏も、国産肉が売れなきゃ骨もガラも出ない。輸入品では今のクオリティは保てず、国産にこだわれば今よりも価格が急騰してしまうでしょう」

 TPPに加盟して、日本に得はないの?

池田
「日本はすでに、東南アジアのTPP加盟国のすべてとEPA(FTAよりも強力な経済連携)を締結しています。例えば、タイやインドネシアにおける日本車のシェアは現時点で約90%もある。ほかの日本製品も浸透度は圧倒的。だから得をするつもりの輸出産業でさえも大きな上積みは不可能です」

 でも、土壇場で脱退しちゃって大丈夫なの?

池田
「そんなことをしたら国際的な信用を失うなどと言うのは、役人やエセ知識人、反日本的な人たちです。日本にとって何よりも重要なのは日本人の安全と豊かさです。そのために働き、決断をするのが政治家の仕事。どんな政策でも、間違っていると判明した時点で方針を転換すべき。その決断を下せない政治家など不要なのです」



週刊プレイボーイ 2016年 No.17号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』 vol.31」より

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