Last updated 2018-03-23

日本の外交専門家がトランプの躍進を予測できなかった理由とは

「民主党=リベラル」で、「共和党=保守」は間違い


池田
「ドナルド・トランプ氏の快進撃が続くアメリカ大統領選ですが、日本ではほんの数カ月前まで、『トランプなんてあり得ない。最終的には消える』と報じられていました」

 なぜ日本の外交専門家や新聞は予測をはずしたのか?

池田
「日本で外交の専門家と呼ばれている人たちは、外務省出身者か、学者という名の、学校と言う安全な敷地から外に出たことのない半端者ばかりだからです。彼らはアメリカの超有名大学や大学院の留学経験者ですが、そんなやつらにアメリカの“真実”は見通せません」

 留学していれば少しはわかりそうなものだけど……。

池田
「アメリカの有名大学は、世界中から優秀な人が集まる本当の最高学府です。アメリカ人のなかでもごく一部の学生しか入れない。裏を返せば、“普通のアメリカ人”がほとんどいない環境なのです。よくテレビで国際通を気取るコメンテーターが『アメリカにいる私の友人が言ってたんですが』と自慢げに話す場面を見かけます。しかしそのお友達もまたエリート層であり、彼らの話は大部分のアメリカ人の感覚から離れてしまっているのです。彼らが詳しいのはウォールストリートの金融情報やワシントンの利権政治情勢であり、アメリカ全土を巻き込む大統領選のことはわからない。真のアメリカは広大な田舎にあるのに、留学組のエリート層は田舎を知らないのです」

 よく日本の専門家や新聞はアメリカの民主党を「リベラル」、共和党を「保守」と分類しているが、池田氏によるとこれも誤った認識なのだという。

池田
「リベラルというと日本の野党のようなイメージを持ってしまいますが、まったく違う。旧社会党や旧民主党、日本共産党など、日本の野党の多くは反日本的で反愛国的です。しかし、アメリカの民主党支持者たちは強烈な愛国者です」

では民主党と共和党の違いをわかりやすく説明すると?

池田
「民主党支持者は連邦政府よりも各州の自治を重視することで、アメリカとアメリカ人が幸福になればいいと考えます。彼らは自国のことを好んで『ユナイテッドステイツ』と呼びます。一方の共和党支持者は、アメリカとアメリカ人が幸福になるために連邦政府の権限を強化し、世界最強のリーダーであり続ける必要があると考えています。彼らは自国を『アメリカ』と呼ぶのが大好きです」

 そうだったのか!!

池田
「私はアメリカの田舎で暮らした経験があるのでわかりますが、今、“普通のアメリカ人”がワシントンに不満を感じている最大の原因は、アメリカが強さを失いつつあるからです。そしてその感覚をくみ取ったトランプ氏が大躍進しているのです。もしトランプ氏が指名争いに敗れても、もっと強気でアメリカ中心的な考え方の候補者が選ばれるだけ。民主党の候補者は、アメリカを強くするプランを具体的に示さなければ無党派層の票を獲得できないでしょう」

 アメリカ大統領選が与える、日本への影響は?

池田
「誰が大統領になったところで、アメリカの弱体化という大きな流れは変わらない。それにともない、日本の安全保障を巡る環境も変化していきます。しかし、安倍政権に限らず、日本の政治家が国際情勢を知るための情報源にしているのは外務省です。冒頭でお話ししたとおり、外務官僚の主流は東大卒で、国費でアメリカの超有名大学に留学して国際通になったと勘違いした連中の集合体です。アメリカの大統領が誰になるのかもわからない奴らが、細かくデリケートな国際情勢を正確に分析できるわけがない」

 ヤバイですね……。

池田
「同盟国のアメリカが弱体化しているのに、中国は肥大化している。この事実から目を逸らさず、最悪の場合には日本が単独で自国を守り抜けるような体制を早急に整えることが、政治の最も重要な役割です」


週刊プレイボーイ 2016年 No.16号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』 vol.30」より

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