坊ちゃん育ちの二世は悪～い秘書にご用心！

　先週は池田氏に、甘利明前大臣の金銭スキャンダルについて解説してもらった。甘利氏は素早く辞任表明したことで、ダメージを最小限におさえられたように見えるが――。

池田
「辞任会見以降、報道が一気に沈静化したからそう感じるのでしょう。しかし、甘利さんの対応が上出来だったかと問われれば、答えはノーです」

　どういうこと？

池田
「報道が沈静化した理由は、『悪いのは甘利さんじゃなくて秘書か……』と気付いたからです。現職大臣本人の不祥事ならマスコミも“数字”を期待できるけど、無名の秘書が悪いとなると、一気に地味な事件と化してしまいますからね」

甘利氏はどう対応すれば合格点だったのか？

池田
「世間にはまだ、『本当は甘利さんも関与していて、秘書はトカゲの尻尾切りなんじゃないの？』と思う人だっているわけです。
しかし清島健という秘書は、甘利さんの名前を利用して詐欺を働いたのです。収賄ではなく、最初からできもしないことをできるかのように騙して金品を巻き上げただけ。
　甘利さんから見れば、ただの裏切り者であり、犯罪者です。こういう秘書は、絶対に余罪がある。もっと断固とした対応を取る必要がありました」

具体的には？

池田
「まず、秘書からの辞表を受け取る形での退職ではなく、懲戒解雇にすべきでした。
その上で、『背任』や『横領』で刑事告発する必要があった。そういった強い対応をした後に、部下である秘書の犯罪行為に気付けなかった自らの監督責任をとって辞任すればよかった。
そこまでやっておけば、後々になってから清島元秘書らの余罪が発覚しても、甘利さん本人にダメージが及ばないのです」

今回のような悪徳秘書って、ほかにもいるんですか？

池田
「ウヨウヨいますよ。私は実際に知っているので、断言できます。記者さんたちは、ほかの政治家の秘書も徹底的に調査したらいい。必ずスクープをゲットできますよ」

マジで!?　どういう政治家の秘書に悪い奴らが多いの？

池田
「甘利さんもそうですが、坊ちゃん体質の二世議員や、クリーンで政策通を気取る議員の秘書に多い。さらに、与野党構わずいろいろな議員のもとを渡り歩く秘書も危ないのが多い。
二世議員たちは、古参の秘書もついてきます。彼らはあらゆる面で新人議員よりも知識があるので、選挙も政治資金集めも秘書任せになっていき、そのプロセスもチェックしなくなるのです。
　さらに、古参秘書側の視点で考えてみてください。世襲する前に仕えていた議員は大物だったのに、その子供が継ぐと新人議員の秘書になってしまう。大物議員には自然と人やカネが集まるけど、新人には権力がないから、票はともかくカネは集まらない。そんな苦労を知らない能天気なボンボン議員に仕えていると、よからぬ心も生まれやすいのです」

政策通の議員というのは？

池田
「よく見られるのは、中央（東京）での活動やメディア出演には熱心なのに、選挙や資金集めなどの地道な活動を嫌う議員。初当選がこの20年以内の人に多いです。こういう人は、地元や陳情を完全に秘書任せにするから好き放題にやられちゃう。おまけに坊ちゃん育ちだから人を疑わない。秘書の管理・監督も怠る。それ以前に、秘書が悪さをしていないかどうか、チェックのやり方もわからない」

議員は、どうやってチェックすればいいの？

池田
「それは議員の得意分野や選挙区の地域性によってさまざまです。自分の秘書が不正を働いていないかどうか心配な議員は、私に相談してもらえれば、正確な診断をして差し上げますよ」

悪～い秘書たちからも、悪事をバレないようにするための相談が殺到したりして……。

週刊プレイボーイ 2016年 No.8号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』 vol.22」より

Index に戻る