来年度予算は事実上今週決まるのだ!!
年明けからの通常国会では、国家予算の審議が始まります。年間100兆円近い額の使い途を決める予算委員会の模様は、NHKで生中継されるほど世間の関心が高い。
しかし実際には、予算の中身は前年の8月下旬にはほとんど決まってしまっているのです。
今週は、日本の国家予算がどのような仕組みで決められているのかを解説しましょう。
国会で予算を審議するためには、たたき台となる「原案」が必要です。原案は、各省庁から財務省に「来年はこれだけ使いたい」と要求する形で提出される。
これが「概算要求」で、毎年8月下旬に行われる。
そこから各省庁は、要求額を全額使い切る計画を立てることに明け暮れる。
そして最終的に、クリスマス前後の3日間で財務省と各省庁が集中的に折衝を行ない、正式に「政府予算案」を決定する。
まさに今週の話です。
この政府予算案が翌年1月からの通常国会で審議され、3月末までに承認され、4月以降から実際に執行される。これが基本的な流れです。
しかし、国会「審議」といっても、与党は予算案を通そうとするだけだし、野党は批判するだけ。
つまり、各省庁が要求した予算案は、ほとんどそのまま可決されてしまう。「予算の確保が命」の各省庁にとって、政府予算案を決める「今週」こそが、まさに勝負のときなのです。
ここで問題なのは、8月の概算要求から政府予算案が決まる12月まで、政治が一切関与していないことです。
選挙で選ばれた政治家が予算案作りにタッチせず、巨額な予算を役人が編成しているのです。
役人の基本性質は、徹底した「前例主義」です。以前からある予算は継続するし、新たに必要な予算があれば加えていく。
「失われた20年」といわれ、デフレとマイナス成長が続いた最近20年間でも、国家予算は前年度比で数%ずつ、常に増え続けた。
彼らにとって、景気も世界情勢も関係ないんです。
そして前例を踏襲し、前年度よりも予算額を拡大させた「優秀な官僚」が評価され、出世するのです。もしも「税収が減ったんだから支出も減らしたほうがいいんじゃない?」と素朴な意見を言う官僚がいても、その人は出世コースからはずされるだけです。
私は20年近くにわたり、予算の決定プロセスを永田町の内側から観察し続けてきましたが、12月の政府予算案が、概算要求から大きくかけ離れた例を見たことがありません。
つまり、8月に各省から出される概算要求こそが、予算編成における最も重要な意思決定場面なのです。
しかし、こんなにも重要な8月に、与野党の国会議員たちは地元回りや海外視察(外遊)に精を出していて、国会が開催されたことも、概算要求について議論されたこともない。
官僚が最初に使いたい金額を決め、後から内容を考えるという、極めていい加減な手順で作られた予算のために、国民は重い税金を課せられ、足りない分は国債で補い続けているのです。
では、どうすべきなのか?
「概算要求」という言葉にある「要求」の相手は、国民でも国会でもない。財務省です。
しかし、本来、その予算が本当に必要かどうかを検証する役割は、国民の代表たる国会の責務のはず。それをすべて役人に任せているからおかしなことになるんです。
だから私は、役所が概算要求をする仕組み自体を廃止すべきだと思っています。
はじめに国会が大枠の予算額や方針を決めた後、細部については各省庁が作業すればいい。
しかし、現実はそうなっていない。来年1月からの通常国会では、役人たちが前例主義で決めた国民不在の政府予算案を、政治家たちがもっともらしい顔で審議するのでしょう。
週刊プレイボーイ 2016年 No.1・2合併号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』 vol.17」より