Last updated 2018-03-23

「テロへの対応」とは「21世紀の戦争」すでに日本は戦争に参加している!!

弱小勢力が強国に歯向かう「非対称戦争」の恐ろしさ


 今週は、フランスのパリで起こった同時多発テロについてお話ししたいと思います。
 今年は1月7日にパリで10名以上の犠牲者を出した「出版社襲撃テロ」で幕を開けましした。そして、またもやパリを舞台にした悲惨なテロで一年を終えようとしています。

 フランスだけではなく、今年はテロの犠牲者は、すでに世界で3万人を超え、過去最大の被害を生む年となりそうです。

 まず、テロの犠牲となられた方々に、心から哀悼の意を表します。

 そのうえで、平和な日本に暮らす私たちが理解しなくてはいけないのは、「テロ対策」と言おうが「テロとの戦い」と言おうが、IS(イスラム国)やアルカイーダといった、いわゆるイスラム過激派勢力たちが引き起こすテロリズムとそれへの対応は「戦争」なのだということです。

 ステルス戦闘機やイージス艦などに代表されるアメリカの最新鋭ハイテク装備の圧倒的な力を見せつけられた湾岸戦争(1990年)やイラク戦争(2003年)以降、主権国家同士が正面切って戦う戦争は世界から無くなりつつあります。
 しかし、逆に地域紛争は爆発的に増え、テロという新たな戦争が生まれました。

 日本ではあまり知られていませんが、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの前年のの10月、アラビア半島南部のイエメンで、世界を震撼させる事件が起きました。
 港に停泊中だったアメリカ軍の駆逐艦「コール」に、ふたりのアルカイーダ過激派が小さなモーターボートで自爆テロを仕掛けたのです。

 「イージスシステム」という最新鋭技術を搭載する米軍艦は、たったふたりの原始的な攻撃で大破し、50名以上の兵士が死傷しました。

 この事件は、近代的な軍隊を持たない民族集団や組織でも、アメリカとも「対等に」戦争をすることが可能であること、つまり、テロの「有効性」を証明してしまいました。

 アメリカが介入したベトナム戦争(60〜75年)や、旧ソ連によるアフガニスタン侵攻(79〜89)でも、近代的な軍隊に対しゲリラ戦が有効なことは立証されていました。
 しかし、そうした20世紀のゲリラ戦が、国や地域だけを舞台にするのに対し、21世紀のテロは違う。
 アルカイーダの拠点とされるアフガニスタンから遠く離れたイエメンの港で「コール」は襲撃され、さらにアメリカで無防備な市民が攻撃対象にされたのです。

 このふたつの事件は、テロ戦争の「深刻さ」も証明しました。
 テロ勢力は、敵に関係するすべての市民や都市を対象に、宣戦布告も無く、どんな場所も一瞬で戦場に変えてしまう残酷な戦争を仕掛けてくる。
つまり、両者の軍事力が圧倒的に違うだけでなく、戦術もまったく異なるわけです。
このような戦争を「非対称戦争」といいます。

 日本でも、「テロを許さない」とか「テロとの戦い」という言葉を耳にします。
 しかし、「非対称戦争」ということは、その戦いはパリやニューヨークといった遠い地ではなく、いつ何時この日本が攻撃されるか分からないのです。
 つまり、日本の首相が「テロを断固許さない!」と勇ましい発言をすれば、それはすなわち日本が戦争状態に突入したことを意味します。

 では、この「戦争」に日本はどう対処するべきか?
 それにはテロ戦争の「原因」と「きっかけ」、そして本質を理解する必要があります。

 私は2001年のニューヨーク同時多発テロ事件後に、何度も何度も開催された自民党の外交部会と国防部会の合同会議をすべて見ていました。
 しかし、政府も与党自民党もテロの本質を解析できないまま、うやむやに終わってしまったのです。

 あれから14年。テロ戦争は激しさを増しています。
 来週は、テロ戦争の本質についてもう少し解説します。


週刊プレイボーイ 2015年 No.50号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』 vol.14」より

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