天才族議員だった父が息子を英才教育する!!
34歳にして首相への道が見えてきた小泉進次郎氏。彼の今後を占うには、その父親の人となりを知るのが一番です。
先週は、小泉純一郎元首相が政界で変人扱いされていた頃の「熱いエピソード」を紹介しました。今週は、小泉元首相の知られざる「裏の素顔」についてお話ししましょう。
小泉さんは、一般的にはクリーンなイメージが強いはず。
しかし、事実は違う。彼は最強の「厚生族議員」だったのです!意外でしょ?
マスコミから「農林族議員のドン」とまで呼ばれて悪者扱いをされた、私が仕えた松岡利勝元農林水産大臣も真っ青なほどの、超強力な族議員でした。
私が松岡さんの秘書だった頃、支援者から厚生省(現厚生労働省)に関わる難しい陳情をされて、松岡さんの影響力では「口利き」が成功しない場合には、度々小泉さんにお世話になったほどです。
でも、首相在任中から今に至るまで、小泉さんが「族議員」だったという印象は一切ない。それどころか、郵政民営化や道路公団民営化に反対する郵政族議員と道路族議員を徹底的に悪役に仕立て上げて全滅させ、自分は常に世間からクリーンなイメージを抱かれている始末。
なぜでしょうか?
その理由は、小泉さんが平成8年(1996年)に2度目の厚生大臣に就任する1年ほど前、当時付き合いのあった厚生省のキャリア官僚たちと私のやり取りに象徴されている。
彼らに、「誰に厚生大臣をやって欲しい?」「今までで一番良かった大臣は誰?」と私が問うと、なんとその場にいた11人中9人までが「小泉純一郎さん!」と即答したのです。
官僚からの高い支持率は何を意味するのか?
それはスキャンダルに対するディフェンス力の強さを意味します。
一般的に、政治家が省庁の事業や許認可権に対し「口利き」することなどを「利権」と言う。
しかし、利権スキャンダルが露呈するとき、実は情報の漏えい源が関係省庁である場合がほとんどです。
つまり、調子に乗り族議員ぶって威張り散らす政治家に対する役人からの反撃が、利権情報を新聞などにリークすることなのです。
逆に、役人から本当に信頼されている族議員は、決して利権スキャンダルで名前が挙がったりしません。
小泉さんが厚生族議員である事実はもちろん、そのイメージすらないことは、彼が史上最強の族議員であった何よりの証拠です。一見、ただの理想論者にしか見えない小泉さんですが、誰よりも完璧に日本の役所と役人たちをコントロールしていたわけです。
彼はそうして厚生省という「陣地」を確保した上で、郵便局を抱える郵政省(現総務省)や、道路公団を抱える建設省(現国土交通省)などをやっつけまくった。
先日、自民党内の人事で、父を敬愛する小泉進次郎氏が「農林部会長」に就任した。
報道では、TPP大筋合意後の農林部会長は、農業関係者からの反対が大きいから大変な役回りだなどと言われていますが、完全に的外れな分析です。
かつて私が携わった、TPPの原型とも言えるGATTウルグアイ・ラウンド交渉のときは、「ウルグアイ・ラウンド対策費」という名目で、農水省と農協は6兆100億円もの膨大なカネを手にした。
それを覚えている農水省や農業関係者たちは、来年夏の参議院選挙で安倍政権を支える代わりに、「TPP対策費」としての巨額な予算を水面下で要求していることでしょう。その窓口となるのが、農林部会長に就任した小泉進次郎氏なのです。
稀代の天才族議員だった父・純一郎氏が、このチャンスを見逃すはずがありません。
息子にノウハウを注入し、誰も気付けないうちに、強力な「農林族議員・小泉進次郎」を“密かに”誕生させることでしょう。
週刊プレイボーイ 2015年 No.48号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』 vol.12」より