「日本新聞協会」は身勝手な詐欺師集団だ!
今週は、第三次安倍内閣の改造人事の裏に隠れた、「もうひとつの重要人事」について話したいと思います。
安倍首相は、自民党の税制調査会長を、党内最多の当選15回を誇る大物議員である野田毅氏から、衆議院で3期、参議院で1期務めただけの宮沢洋一前経済産業相という“小物”に交代させることを決めました。
これは、2017年4月の消費税率アップの際に軽減税率の適用を主張する公明党に配慮したものでしょう。 野田氏は軽減税率に強く反対していたからです。 しかし、自民党はなぜこの人事で、公明党に譲歩する必要があったか?
それを理解するには、「税制調査会」について知っておく必要があります。
国の税制を決めるのは、「政府税調」と呼ばれる首相の諮問機関である税制調査会と、「党税調」と呼ばれる政党に設置された税制調査会、そして財務省です。 特に自民党税調は日本の税制を事実上決める組織で、絶大な権力を誇っていました。
そのため、歴代の自民党税調のトップには、大臣を何度も歴任したような超大物が任命されるのが通例だったのです。
そしてかつては、自民党税調が大詰めを迎える時期になると、自民党本部前から入り口のホール、さらに税調の会議室前の廊下まで、数千人を超える各業界団体の代表者たちで埋め尽くされるのが恒例でした。
満員電車のような混雑のなか、業界団体の人々が口々に「先生、頑張ってください!」「頼みますよっ!!」とエールを送る風景があちこちで見られ、まるで試合に臨む直前のスポーツ選手に向けた応援のよう。
政治家は、党税調での言動が業界団体から評価されれば、選挙のときにはその団体が全力で応援してくれる。 この「組織票」をより多く獲得して選挙地盤を安定させ、中央政界(永田町)での政治活動に専念できれば、より早く、高いポストに出世できるわけです。
これが、かつて自民党議員が各業界団体の要望を必死に聞いていた理由でした。
ここで、みなさんに知っておいて欲しいことがあります。
税制の影響を受けるのは、企業や経営者に限りません。
基本的に、すべての労働者はなんらかの業界に属します。 そしてほとんどの業界は、自分たちの意見を政治に反映させるための業界団体を作っている。 つまり業界団体とは「働く国民の集まり」とも言えるのです。
各業界団体が、自分たちの味方になる議員を応援し、やがて権力を握る政治家に出世してくれれば業界が潤い、その業界で働く労働者にも恩恵が行き渡る。 これって、「割と民主主義」だと思いませんか?
しかし日本の新聞は、業界団体を「政治と癒着した既得権益団体」だと非難し続けた。 そして業界団体に支援される政治家を「族議員」と断罪し、悪役にした。
おかげで「国民の声」を訴える業界団体も、それを吸い上げる政治家も弱体化し、永田町は国民不在になってしまった。 同時に、自民党全体の選挙基盤も揺らいでいったのです。
一方、日本の民主主義を破壊した新聞ですが、自分たちはちゃっかり「日本新聞協会」という業界団体を作っている。
そして実は、再来年の消費税率アップの際、新聞だけは税率を据え置きにしろと政治に圧力をかけているのです。
まさに正義の看板を掲げた詐欺師集団といえましょう。
新聞に弱体化させられた選挙基盤を再構築するべく、自民党が組んだ相手が公明党でした。 今の自民党が公明党抜きで選挙に勝つことは不可能。 だから野田氏を切ってまで公明党の主張を丸のみしたのです。
もちろん、公明党支持者も国民の一部です。 でも、より多くの業界団体から幅広く要望を拾い上げる体制の方が、もっと民主主義だと思いませんか?
週刊プレイボーイ 201年 No44号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!! 』vol.9」より