臨時国会“スルー”は戦後70年で5回目!!
自民党と公明党は、秋の「臨時国会」を開催しないと決定しました。
これ、「小泉郵政解散」の年以来、実に10年ぶり。現行の憲法が制定された昭和21年以降、開かれなかった年はたったの4回だけという超異例なことなんです。
毎年、1月から5ヶ月間にわたって開かれるのが、国の基本的な予算や法律を審議する「通常国会」。これに対して臨時国会は、主に与党が国民受けの良い経済政策を実施する「補正予算」を組むために、この10年間は毎年開催されてきました。
一般報道では、「安保関連法を通過させたばかりの与党が、野党からの追求を嫌がって逃げを打った」とされています。
しかし、その分析はあまりに表面的です。
この秋、臨時国会が開かれない背景には、実は来年の参議院選挙に向けた与野党の奇妙な思惑の一致があるのです。
わかりやすく説明しましょう。
まずは与党である自民党と公明党。もちろん、安保関連法への批判と追求を避けたい思いがないわけではない。しかしそれ以上に、与党にとって大きなメリットがあります。
臨時国会は主に補正予算を組む場です。これを今秋にやらないとなると、来年1月の通常国会の冒頭で補正予算を組む流れになり、2月には補正予算を執行できる。そして4月には本予算も執行できる。
つまり、来年7月に行なわれる参議院選挙の前に、大型予算の大盤振る舞いを立て続けにできるのです!安倍政権の支持率を事実上支えているアベノミクスへの期待を国民に持たせ続けるためにも、非常に魅力的な手順と言えます。
一方、民主党を筆頭とした野党側はどうか。実は彼らも、それほど本気で臨時国会を望んでいたわけではないのです。
すでに成立してしまった安保関連法をいくら追求したところで、それは「ただの批判」にしかならない。それよりも、来年の参院選で何とか与党を過半数割れにもっていきたい。
だから、野党側も来夏の参院選を考えると、臨時国会に時間を費やすより与党に勝つための野党再編の可能性を探るほうが得だと計算したわけです。
以上が、臨時国会を開催しないことで与野党の思惑が一致した背景です。
それでは、ここにきて話題になっている野党統一の動きはどうなっていくのでしょうか?
私が永田町で長年見てきた政党の離合集散劇には、鉄板の法則がありました。それは、基本的な方向性を失って一時の得を求めた政党や勢力は必ず消滅したということです。
以前に私がこの連載で指摘したように、民主党は安保関連法を完全否定したことで、政権与党の目はなくなったと言えます。
それには理由がある。
民主党は、安保関連法が憲法違反だと訴えてしまった以上、仮に彼らが政権を奪取したとしても、まずは憲法9条の改正をしたうえで安保関連法を再整備する必要がある。
もし憲法を改正しない場合はもっと大変なことになる。
まずは成立済みの安保関連法を廃案にして、さらに「日米安保条約によるアメリカの世界戦略に日本は協力しない!」と国際社会に告げる必要があるのです。
どちらも、今さら民主党が言い出せない選択肢です。
民主党が共産党と選挙協力しようとするほどに焦っているのは、もうこのままでは政権与党に戻れないと感じているからでしょう。
彼らも本音では、共産党となんか組みたくない。もともとは“橋下徹がいる維新”と協力したかった。しかし、橋下氏は完全に安倍首相に完全に取り込まれてしまった。私は、橋下氏が数年後に自民党入りすると見ています。
民主党を中心とした哀れな野党再編劇の向こうで、安倍首相の高笑いが聞こえてきそうです。
週刊プレイボーイ 2015年 No.45号「池田和隆の『政界斬鉄剣!!!』 vol.10」より